ServiceNow Japanは10月16日、「Transform the world of work(仕事の世界を変革する)」というテーマの下、年次イベント「Now at Work Tokyo」を開催した。基調講演では、社長の村瀬将思氏が同社が考える働き方改革、同社の製品によって実現する働き方改革について語った。
働き方改革で重視すべきは「生産性の向上」
初めに、村瀬氏は「現在、政府の後押しもあって、日本の企業では働き方改革が進んでおり、労働時間の短縮などの効果が見られる。しかし、現在の施策が生産性の向上につながっているかどうかは疑問を感じる。世界の主要な国と比べて、日本の生産性は低い。さらに、少子化と高齢化が進む日本では労働人口が増えないことが予測されている。したがって、働き方改革は生産性の向上につなげる必要がある」と、働き方改革において生産性向上を重視するべきだと主張した。
村瀬氏は、働き方改革を生産性向上に結び付けるカギとして、現在の消費者の生活を挙げた。現在、消費者の生活においては、「自分仕様の情報」「裏処理の自動化」「決済の自動化」が起こっているという。
「自分仕様の情報」とは、新聞を読むように、以前は自分が必要な情報は取りにいっていたところ、現在では、スマートフォンのサービスやアプリを活用することで、必要な情報が自動的に集まってくることを意味する。
「裏処理の自動化」とは、数クリックで商品の購入から支払いまで行えるが完了するAmazonのプラットフォームのように、消費者の見えないところで複雑な処理が自動化されていることを意味する。
「決済の自動化」は、「裏処理の自動化」と重なるが、Uberのように、事前にクレジットカードを登録しておけば、アプリで予約さえすれば決済も行われ、乗車時に支払いを行う必要がない状態をいう。
村瀬氏は、「モバイルインフラが整備したことで、自分仕様の情報、裏処理と決済の自動化といったことが、いつでもどこでも行えるようになった。Amazonは1クリックでこれらすべてが行えて便利だ。便利だからこそ、人々はAmazonを使い、データが蓄積されていく。これを会社でも実現すればよい」と語った。
消費者の生活で起こっていることを会社にも持ち込めば便利になる
では、どうすれば、このように消費者の生活で起こっていることを会社でも実現できるのだろうか。
村瀬氏は、現在の会社員としての生活においては、「自分仕様の情報」「裏処理の自動化」「決済の自動化」が実現されていないとして、「消費者生活におけるAmazonのプラットフォームの役割をServiceNowが果たす」と語った。
ただし、「企業はそんなに簡単ではない」と村瀬氏。さらに、「会社では、部門別にルールやシステムが設けられており、サイロ化している。そのため、部門別にデジタル・トランスフォーメーションが行われる可能性があり、それは危険なこと」と指摘した。
村瀬氏は、JR東日本の券売業務、改札業務、精算業務を例にとり、部門横断型のデジタル・トランスフォーメーションの成功例を紹介した。JR東日本では、自動券売機、自動改札機、自動精算機を投入することで、3つの業務を自動化した。この時点では「あくまでも操作は利用者が行っており、部門別の自動化にすぎなかったが、「Suicaが登場したことでプラットフォーム化が進み、さらにモバイルSuicaが生まれたことで券売、改札、精算の業務が一体化した」と、村瀬氏は説明した。
ServiceNowは企業においてデジタル・トランスフォーメーションのプラットフォームとなることを狙っている。今年9月に発表されたプラットフォーム「Now Platform」では、モバイル機能「Now Mobile」を追加することで、コンシューマー向けサービスのようにシンプルで直感的なモバイル体験を企業にもたらす。
ServiceNow導入で働き方改革を果たしたアフラック
続いて、ServiceNowを活用して、働き方改革を推進しているアフラック生命保険の上席常務執行役員を務める二見通氏が登壇した。ServiceNowの製品を導入したきっかけは、当時利用していたグループウェアの技術的な進化が止まってきたので、そろそろ新たな技術を利用しようと考えたからだったという。
グループウェアの次に利用する製品においては、プラットフォームとして会社横断的に利用することが重視された。ServiceNow製品の導入は2017年12月のビジネスアプリケーションを皮切りに、IT部門からスタートした。現在、ITビジネスマネジメント、ITオペレーションマネジメント、ITサービスマネジメント、セキュリティオペレーションまで導入が済んでいる。
今後、HRサービスデリバリとファイナンシャルマネジメントを導入する予定で、これまで使っていたグループウェアからの移管は2019年中に完了する計画だ。
二見氏は、ServiceNowの導入効果として、「時間と場所にとらわれない働き方の実現」「意思決定が迅速になったことによる社内業務の効率向上」「ユーザーニーズの変化に対する柔軟かつ機敏な対応の実現」の3点を挙げた。
意思決定に関しては、Now Platform上ですべてワークフローが完結できるようになったことで、スピードが上がったという。アプリケーション開発についてはスピードが70%向上したのだが、二見氏は「これほどまで効果が上がるとは意外だった。現場の担当者に何度も聞きなおしてしまった」と語った。あわせて、コスト削減の効果も出ているという。
さらに、「それ以上の効果と言えるのが、刻々と変化するユーザーのニーズに応えられるようになったこと。これは、働き方改革にもつながっている」と、二見氏は述べた。
アフラックは現状に満足することなく、さらなる進化を遂げるべく、新たなチャレンジに取り組んでいる。Now Platformとスマートスピーカーを連携させることで、音声によってNow Platformの画面をPCに表示することが可能になっている。音声認識を導入することで、利便性の向上と業務効率化を狙っているそうだ。
働き方改革に関する取材を行っているが、スマートスピーカーを活用している話はあまり聞かない。他の人に聞こえてしまうなど、課題もあるだろうが、キーボードの操作と音声による操作を業務に取り入れるという試みは興味深い。