日本航空(JAL)は10月16日、羽田空港で国内線向けボーイング787-8型機を報道公開した。「客室の仕様はこんな感じです」といった類の話なら、すでにあちらこちらで報じられているだろうから、本稿では少し違った視点から取り上げてみよう。

  • 787-8国内線仕様の一番手はJA846J。既存機の転用改造ではなく新造機である 撮影:井上孝司

    787-8国内線仕様の一番手はJA846J。既存機の転用改造ではなく新造機である

導入の背景

これまで、日本航空は経済性の高さを生かして、787は国際線専用としていた。かつてなら747、今なら777-300ERが長距離国際線の主力だが、いずれもキャパシティが大きいので、相応の需要がある路線に投入しなければ採算がとれない。

一方、787は747や777-300ERよりキャパシティが小さいが、経済性に優れており、そこそこの需要がある路線に直行便を飛ばしても採算がとれる。筆者が昨年に利用した成田-サンディエゴ線は、その典型例と言えるだろうか。ロサンゼルス線と違って空港が混雑しないので、サンディエゴ線はけっこうお薦めである。

閑話休題。これまでは、「787を国際線に張り付ける日本航空」と「787を国内線と国際線の両方に導入する全日空」と好対照をなしていた。ところが、日本航空も国内線に787を投入することになったので、ここへ来て状況が変わったことになる。その国内線向け787-8では、客室をA350-900と同様の新仕様とした。

これまで、日本航空の国内線は機種に関係なく、おおむね「SKY NEXT」仕様で統一してきていた(グループ会社の機材は別として)。しかし今後は、A350-900や787-8で導入された新仕様が標準になっていくようだ。機種ごとに客室の仕様が異なるよりも統一されているほうが、運用面でも、整備・補給・訓練の面でも具合が良い。利用者にとっても、どの機種に乗っても使い勝手が同じというほうが助かる。

ただ、投資に対するリターンの問題もあるから、既存の機体まで新仕様に変えるのは割に合わないと思われる。すると、これから導入する機体を新仕様として段階的に移行するほうが理に適う。

787-8は既存機材のリプレース?

なお、今回の787導入が、既存機材のリプレースであるという公式なアナウンスはされていない。ただ、機体規模からいって近そうなのは767である。そこで、ちょっとした比較表を作ってみた。

  • 787-8、767-300ER、A350-900の比較

こうして見ると、787-8はA350-900より小型で、767-300ERよりいくらか大きい。777、あるいはA350-900では輸送力過剰になってしまう路線や時間帯が、787-8の出番ということだろう。

日本航空の国内線向け767には複数の仕様がある。まず機体からして、古い767-300と、後から導入した767-300ERの2種類がある。このうち、767-300ERはファーストクラス付きのA25仕様機とファーストクラスがないA27仕様機があるが、767-300はファーストクラスがないA26仕様機だけ。A26もA27も定員は同じで、クラスJが42席、普通席が219席、合計261席である。

787-8が767-300の代替とすると、ファーストクラスの有無が異なるから話が合わない。一方、767-300ERは代替するには時期尚早。すると単純な置き換えではなさそうだ。今後、日本航空の機材動向がどうなるかは興味深い。