台風19号の記録的な大雨で堤防が決壊した阿武隈川や千曲川流域には「100年に1度」の確率でしか見られない非常にまれな降雨があったことが防災科学技術研究所(防災科研)による解析で明らかになった。この解析結果によると今回の大雨は「今後100年程度は起きない」ことを意味しておらず、気象・気候の専門家は、地球温暖化による海面温度上昇などにより今後も記録的な豪雨に見舞われる危険性を指摘している。

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    地域ごとに「何年に1度」の大雨が降ったかを示す解析図(右軸は年数)(防災科研提供)

防災科研は、気象庁の過去の観測データを使い、今回台風19号の影響で大雨が降った地域ごとに、「確率的に何年に1度」みられる大雨か(再現期間)を、12日の24時間雨量を基に「極値統計」と呼ばれる理論で5キロメートルのメッシュに分けて解析した。

その結果、長野県の千曲川や宮城、福島両県の阿武隈川流域を中心に、「100年に1度の確率で生じる」ほどの「非常にまれな降水量」だったことが判明した。この2河川流域のほか、群馬、栃木両県の一部も「100年に1度の確率で生じる」大雨が降った地域があった。気象庁によると、12日の24時間の雨量は、100地点以上で過去最大の降雨量を記録し、神奈川県箱根町では900ミリ以上のすさまじい量の大雨が降っている。

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    地域ごとの降雨量(10月13日0時時点の24時間降雨量)(防災科研提供)

防災科研は降雨量と別に台風19号に伴う暴風域も分析。その結果、風速毎時25キロメートルを超える暴風域は、台風の通過とともに、台風の中心点よりやや東側の東京湾沿岸から房総半島、茨城県東部を通過したことが分かった。

台風19号は、海面温度が比較的高いところで発生して急激に勢力を拡大、日本近海でも海面温度が高かったことで勢力を維持したとされている。気象・気候の専門家によると、台風は海面温度が高いと水蒸気の供給を受けて発達することから、今後も温暖化が止まらず海面温度が高い状態が続くと、19号のような大きく強い台風が日本付近に接近したり、上陸するリスクは高いという。

国土交通省の16日朝の時点では、堤防の決壊は7県55河川79カ所でさらに増える可能性がある。同省は専門家による調査委員会を設置し、千曲川や阿武隈川など決壊や氾濫の現場に調査委員会メンバーを派遣して詳しく調べている。

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