ヴァイナスは10月10日~11日にかけて、都内でプライベートカンファレンス「VINAS Users Conference 2019」を開催。同カンファレンスのオープニングとして、同社代表取締役社長の藤川泰彦氏が登壇。今後の同社のソリューションの方向性についての説明を行った。
最初に同氏が語ったのは、もはや毎年恒例となっているCFDの解析データサイズの動向。2012年ころまで、CFD解析データの計算データサイズは年々4~4.5倍ほどの勢いで増加しており、同氏はこれまでも「データサイズの毎年4倍法則」といった表現でこの動きを紹介してきた。2013年ころからは1つの計算データサイズは小さくなったが、ケース数などが増加傾向となり、そして2015年ころから、4倍の法則は完全に崩れ、加速度的にデータサイズの大規模化が進む状況となってきた。
「2019年8月に運用を終了したスーパーコンピュータ(スパコン)「京」と、2021年に本格共用運用が開始される次世代スパコン「富岳」の間で、これがどうなるのかが興味のあるところだが、データサイズそのものが増えていることは間違いない」(藤川氏)とする一方、「常時、こうした最大級のデータを扱う人はごく一部であり、9割以上の人は通常は数十万~2億点程度のデータサイズであることも分かっている。だからこそ、そういった業務で活用する人たちに、常に良い精度を高速で出せるようなサービスの提供を今後も心がけていく」と、単にデータサイズの大規模化に合わせたソリューションを提供していくのではなく、ユーザーが本当に必要とするニーズに寄り添ったサービスの提供を今後も行っていくことを強調した。
また、データサイズの肥大化に併せる形で精度も要求されるようになってきたことにも言及。「どの部分でどういった計算を行うのかはケースバイケースとなっている。それに併せて、1つの解析ツールであっても、戦略的に使い分ける必要がでてきた。ソルバもそうだが、最適化設計、プリプロセッサ、ポストプロセッサそれぞれに役割が増えてきた。こうした状況に対して、今後、どういうソリューションを提供していけば良いかを考えている」とし、例えばポストプロセッサであっても、グラフ化や設計評価分析、ポストプロセスの二次処理、ドキュメントの親和性などの従来CFDポストプロセッサが求められていた領域の周辺への対応や、大規模非定常データの可視化といったより高いレイヤへの対応が求められる一方で、そうした対応がほとんどのツールでもできておらず、「ヴァイナスとしては、これら従来のCFDポストプロセッサでは対応できなかった部分をカバーする新たなツールを用意する必要があると考える」とする。ただし、新たなプラットフォームを提供する、というわけではなく、ポストプロセッサ自身を2次処理していこうという考えで、そうしたことを可能とするツールの1つとして、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発した機械学習処理による固有直交分解(POD)/動的モード分解(DMD)システム「FBasis V1」の提供を7月より開始したとする。
さらにプリプロセッサとしては、同社が提供する「Pointwise」が9月に新たに「hex-core」と呼ぶメッシュアルゴリズムが追加されたことを紹介。これにより、使い分けがより広くできるようになり、課題の解決がしやすくなるとしたほか、最適設計については「市場ニーズが多様化しており、トポロジー最適化とパラメトリック形状最適化を使い分けることが重要」とし、特にパラメトリック形状最適については、多目的最適設計システム「iDIOS v1」に新たなワークフロー構築モジュール「iDIOS EZFlow」が追加されたとし、今後、こうしたさまざまな解析ツールを戦略的に使い分けてもらうことで、それぞれのプロセスにおいて、高度な業務効率化と精度の追求ができるようになるとした。
また、こうした使い分けについての判断には、総合的に見て判断する必要がある場合もあることから、ヴァイナスとしても総合的に、プリプロセッサやポストプロセッサ、クラウドやオンプレミスといった垣根を越えて、ユーザーにとって最適な解は何かということの実現に向けた支援をしていくとしていた。