スウェーデンのカロリンスカ研究所は7日、2019年のノーベル医学生理学賞を、細胞が酸素不足の環境でも応答する仕組みを解明した米国と英国の3人の研究者に授与する、と発表した。授賞理由は「細胞の低酸素応答の仕組みの発見」。同賞は昨年、本庶佑氏が免疫反応にブレーキをかけるタンパク質を見つけ、画期的ながん治療薬の開発に道を開いた業績で受賞したが、2年連続の同賞日本人受賞にはならなかった。
ノーベル医学生理学賞に選ばれたのは、米国ジョンズホプキンズ大学のグレッグ・セメンザ氏、英国オックスフォード大学のピーター・ラトクリフ氏、米国ハーバード大学のウィリアム・ケーリン氏。
授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金900万スウェーデン・クローナ(約9700万円)が3氏に贈られる。
低酸素応答とは、酸素濃度が低い環境下でも細胞が恒常的に働く機構のこと。3人は、低酸素状態になると体内で「HIF」と呼ばれる特別なタンパク質が大量に作られ、酸素を取り込んでその状態に適応することなどを解明した。低酸素応答は、がんや虚血性の疾患、免疫疾患などの病気でも見られ、こうした病気と密接に関係している。これは生命活動の基本で、今回これらの病気の研究や治療法に道を開いたことが評価された。
セメンザ氏は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(ERATO)で、末松誠慶応大学客員教授(現・日本医療研究開発機構理事長)と共同で2009~2014年、新たな代謝システムを探索する国際プロジェクトの研究総括を務めた。
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