インターステラテクノロジズ(IST)は10月6日、都内で同社初となる学生向け就職説明会を開催。約30名の学生たちを前に、同社で活躍するロケットエンジニアたちが、自分たちの仕事内容などの説明を行った。
同社 代表取締役社長の稲川貴大氏は、「ロケットビジネスは配送業。荷主の荷物を宇宙に送り届けて、その輸送量をもらう。宇宙に配達する手段は限られているので、ロケットを作る人たちがサービスも作って提供する。MOMOとZEROをビジネスとして展開しようとしているが、現状、宇宙にものを運ぶ機会が限られている、という課題と、この10年で盛り上がってきた超小型衛星を活用したいというニーズに対応することを我々は目指しており、一緒にそういったロケットを開発してくれる仲間を求めている」と開催趣旨を説明。ISTとしての強みは、ロケット全体を1社で開発・運用している点にあると語った。
また、「MOMO3号機で宇宙まで到達することに成功した。成功までは開発人数も資金調達も大きくできないと考えていたが、この成功でフェーズが変わった」と、初開催に至った経緯を説明。液体酸素を利用する技術は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)をはじめとする日本のほかの組織では現状、実用的なレベルに達しているものはなく、この技術をベースに、高品能ロケットの大量生産による新たな宇宙活用時代に向けた、ユーザーによって便利なロケット開発を将来、先導していってもらえる役割を若い世代に担っていってもらいたい、と学生たちに対する期待も語った。
また、稲川氏の会社説明の後には、同社のロケットエンジニア5人によって、どのような仕事があり、それぞれの仕事にどういった能力が求められるかという説明が行われた。前提となるのが、現時点で、同社はMOMOの量産に向けたチームメンバーの拡充を図ることが目的であるが、社員数として二十数名という規模であるため、自ら行動し、課題を解決できる、という能力はすべてにおいて優先されるとなるほか、各氏が共通して語っていたのは、自分の担当外の分野に対しても面白いと思えるかどうかということ。例えば、エンジンの試験を行うにしても、設計・仕様通りに作られているかを試すことが目的であるため、設計内容を知る必要があるし、アビオニクス関連であれば、マイコンやFPGAを使った開発はできるのは当然のことながら、ロケットというものの特性を理解して、そのつながりを理解する必要がある。近年、盛り上がりを見せるロボットも、メカトロニクスだけでなくエレクトロニクスや材料科学、AIなど、さまざまな技術が求められる分野になりつつあるが、そうした分野とロケットが大きく異なるのが、ちょっとしたミスであっという間に打ち上げ全体が失敗となってしまうということ。そうしたミスを減らすためにも、スペシャリストでありながらも、周りの分野に対する知識を積極的に吸収する必要が強調されていた。
ちなみに、エンジニアたちのトークの後には、学生たちから事前にとったアンケートに回答する時間が設けられたが、そこで多かったのは働き方についての質問。同社は多くの職種で裁量労働制やフレックス制を導入しているが、稲川氏は「8時~17時まで勤務するという時間が重要ではなく、ロケットを開発する、という結果が重要。そのアウトプットを出せる体制で勤務をしてもらう。アウトプットだけを約束してもらうという形態」と説明。ただし、これまでの打ち上げの多くが土日祝日にかかっており、その日だけは来ないと仕事にならないので、打ち上げ直前になると、夜9時に集合などといったこともあるとする一方で、打ち上げの射場から20分程度で自宅に帰れる環境のため、オンとオフの切り替えを素早く行って、昼間は家族と過ごし、夜は射場で仕事をする、といったことを実際に行ったスタッフもいるということなども語られた。
なお、今回の説明会は選考もかねて行われたもので、個人面談も実施された。同社では複数名の採用を予定しており、今回の選考で残った学生たちは、今後、インターンシップやアルバイトとして同社の業務に携わる機会などを得ることとなり、その後、2020年春に新入社員として同社に正式に入社する流れが予定されている。