アジレント・テクノロジーは8月に大阪市に開設したラボ施設を10月より本格稼働させるのに伴い、内部を報道陣に公開。ここを西日本における事業拡大の足がかりとし、新規案件の獲得や西日本の顧客との直接的なやり取りの強化などを図っていき、日本市場における存在感をさらに高めていくことを目指すという。

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    大阪市に開設されたアジレントの「大阪ラボ」。場所は大阪湾を眺めるアジア太平洋トレードセンター

同社は現在、「製薬」、「化学・エネルギー」、「臨床・診断」、「アカデミア・政府」、「食品」、「環境」といった年率3~5%の安定した成長が見込める分野にフォーカスし、分析機器の提供のみならず、消耗品やアフターサービス、そして分析機器を活用するためのコンサルティングなどをエコシステムとして提供することを進めている。

今回の大阪ラボの本格稼働は、そうしたエコシステムを西日本に拠点を構える顧客により広く知ってもらうことを目的としたもの。「大阪だけではなく、中国、四国といった西日本の多くの顧客の皆様に気軽に来てもらうことを目的に開設した」と同社では説明しており、主に液体クロマトグラフィ(LC)や液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)によるサンプルに対する前処理から分離、検出、データ解析まで、顧客のワークフローに併せたソリューションの提供に向けたデモの実演やサンプルテストを実際に行い、顧客のニーズに対する最適な解決策の提案を目指すとしている。

そのため、ラボに設置されている機器も最新のものが多い。例えば同社が2019年7月に発表したばかりのLC/MSのエントリモデルとして直観的な操作を可能とした「Agilent InfinityLab LC/MSD iQシステム」が設置されている。また、さまざまなサンプルのテストや技術のデモを行う必要性があることから、LCやLC/MSのほか、「超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)ソリューション」や「Q-TOF LC/MSシステム」などといった分析機器も設置されており、顧客が持ち込んだサンプルのテストや性能デモなどを手軽に行うことが可能なワークフローが提供できる体制が整っている。

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  • アジレント大阪ラボ内の様子。「Agilent InfinityLab」はフラックスベンチと呼ばれる女性1人でも可搬可能なベンチに搭載することで省スペース性を確保することも可能。ドアで仕切られた奥に調整室があり、ドラフトチャンバーなどが設置されている

ちなみに2019年10月頭時点では、上述した「臨床・診断」分野に対してのサービスは行っていないという。というのも、実際にそれを行うためには医療機器としての登録が必要であり、それに関しては、大阪ラボの運営が軌道に乗り、機が熟した後に行いたいとしているほか、本格稼動後も設備のアップデートなどは継続して行っていきたいとしており、例えば同社が提供するラボに設置されている各種装置の稼働率などを把握可能な「CrossLab Connect」のサーバを設置し、八王子のラボと大阪ラボの各分析機器の稼働状況をその場で見せたり、といったことも考えており、こちらについては2020年初頭には準備が整う予定だという。

なお、アジレント大阪ラボは、大阪市住之江区のアジア太平洋トレードセンター(ATC)ITM棟7階に設置されている。この立地を選んだ理由について同社は、「ラボを設置できるだけの広さを確保できること、そして新幹線で新大阪まで来た顧客が、移動してくる際にも、すべて屋内移動で完結できるので、雨風を気にせずに済むこともメリット」としている。大阪ラボには10名を越す人数を収容できるカンファレンスルームも設置。そこで顧客を対象としたハンズオンセミナーを行い、実際にその分析結果を隣のラボですぐに確認する、といった使い方も想定しており、不特定多数の顧客向けにそうしたセミナーを実施する場合は、同社Webサイトなどでも告知を行っていく予定としている。

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    大阪ラボ内に設置されたカンファレンスルーム。四半期に1回はなんらかの告知可能なイベントを開催していきたいとしていた