市場動向調査会社である英IHS Markitは、2019年における車載用ディスプレイに用いられるTFT LCDの市場規模が10年ぶりにマイナス成長になるとの調査結果を公表した。

それによると、2019年における車載用ディスプレイに用いられるTFT LCDの出荷数は前年比5%減の1億5600万台に留まる見込みで、米中間で生じている貿易紛争の影響を、中国のパネルメーカーがもろに受けた結果だという。

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    車載ディスプレイ用TFT LCD売上高の用途別内訳推移 (出所:IHS Markit)

車載ディスプレイは、自動車のエレクトロニクス化の拡大と、安心・安全の強化に伴うナビゲーション付きセンタースタックディスプレイ(CSD)、計器クラスタの多機能ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、および後部座席エンターテイメント(RSE)システムといった分野で採用が続いてきた。

IHS Markit日本法人で中小型ディスプレイ市場調査を担当するシニアディレクタの早瀬宏氏は、「2008年のリーマンショック以降、車載ディスプレイに使用されるTFT LCD市場は急速に成長し、2009年にはわずか1800万台であった年間出荷台数は、2018年には1億6200万台にまで拡大した。しかし、中国経済が米中貿易紛争による不況のリスク増大に直面しているため、2019年は出荷の伸びにブレーキがかかった。中国の自動車および自動車部品に対する米国の関税引き上げにより、車載ディスプレイ市場は10年ぶりに不況に陥ってしまった」と背景を分析している。

また、「今回の不況は、2019年に自動車セグメントが次の大きな成長機会になると期待していたすべてのディスプレイメーカーにマイナスの影響を与えている。しかし、2020年以降、車載ディスプレイ用のディスプレイ需要は成長路線に戻ると予想されており、特に自動運転車と新しい安全監視機能を中心に、今後数年にわたって複数のディスプレイを搭載した車の販売が増加することが期待されることから、自動車業界からの車載ディスプレイへの要求が高まっていくことが期待できる」(同)ともしており、そうしたニーズに対応することが成長の機会につながるとしている。