市場動向調査企業である英IHS Markitが、2018年の産業分野における半導体市場の分析結果および当該市場向け半導体企業ランキングを発表した。それによると、幅広い産業分野で需要が高まった結果、2018年は前年比10.8%増の520億ドルに達したという。
特に成長率が高かったのは、ネットワーキング、商用および軍用飛行機、LED照明、デジタルサイネージ、ビデオ監視、空調、スマートメーター、自動車、太陽光発電(PV)インバーター、およびヒューマンマシンインタフェースシステムなどで、補聴器や内視鏡、画像検査装置といった医療機器の伸張も成長を促進する要因となったとする。IHSでは、今後も産業用半導体市場は2023年まで年間平均成長率5.8%で成長すると予想している。
IHS Markitの産業用半導体およびセンサーのアナリストであるNoman Akhtar氏は「2018年は汎用アナログICおよびオプティカルの成長率が高く、汎用LED照明市場の継続的な成長に加えてファクトリーオートメーション、電力/エネルギーといった複数の産業セグメントの成長が後押しとなった。また、産業用モータードライブ、電気自動車(EV)用充電器、太陽光発電用インバーター、商業用照明機器分野における需要も高かった。今後は、デジタル化、電力効率向上、ネットワーク化をはじめとするインテリジェント化などの要求に伴い、産業機器向けマイコン市場も広い範囲で成長することが期待される」としている。
産業用半導体の売上高ランキングトップ20
産業用半導体売上高ランキングを見ると、トップは前年比約9%増を達成したTexas Instruments(TI)で、安定した地位を築いている。2位はAnalog Devices(買収したLinear Technologyを含む)で、当該分野の事業規模は前年比10%増の31億ドル。Linearの買収により、FA、軍用航空機、ビデオ監視、テスト/測定、医療、電力/エネルギーといった分野に事業領域を拡大することに成功したことが成長につながったと見られる。3位は独Infineon Technologiesで、当該事業分野の売り上げは同16.9%増の29億ドルで、2017年3位であったSTMicroelectronicsを抜いてトップ3に入ってきた。代わりに4位に転落したSTの当該事業規模は28億ドルと、前年比で成長を遂げたものの、Infineonの伸びにはかなわなかったようだ。そして5位はIntelで、当該事業部門の売り上げは同11%を越す伸びとなる26億ドルで、FA、ビデオ監視、医療機器などでのIoT化が進んだ恩恵を受けたことが大きな要因だという。
6位はMicron Technologyで、FA、ビデオ監視、運輸関連を中心としたIIoT分野におけるDRAM需要の増加が後押しをした。7位はMicrochip Technologyで、Microsemiの買収によるところが大きく、両社の合算規模は19億ドルに達する。8位はON Semiconductorで、注力するCMOSイメージセンサを活用したマシンビジョンのほか、電力/エネルギー、ビルディングオートメーション、補聴器をはじめとする医療機器などを含む、製造現場におけるプロセスオートメーション関連での伸びが寄与したようだ。9位はNXP Semiconductorsで、プロセスオートメーション、ビル/ホームオートメーション、医療機器など幅広い分野で手堅くビジネスを展開している。そして10位は2017年のルネサス エレクトロニクスを抜いてXilinxが入ってきた。主に軍用航空機、テスト/測定、プロセスオートメーションなどの分野におけるFPGAの活用が進んだ結果だという。
なお、日本勢はトップ10には1社も入っていないが、トップ20まで拡大すると、11位にルネサス、12位に日亜化学工業、14位に東芝、16位に三菱電機と4社が入ってくる。しかし、トップ10社のいずれもが前年比でプラス成長を遂げているのとは対照的に、ルネサス、日亜、東芝はマイナス成長を記録。中でも東芝は、2017年は7位であったものが14位にまで後退するなど、大きなマイナス成長となっている。