米Pure Storage(ピュアストレージ)は9月17日~18日に米国テキサス州オースティンのAustin Convention Centerにおいて年次カンファレンス「Pure//Accelerate 2019」を開催。本稿では米Pure Storage 副社長兼チーフアーキテクト Rob Lee(ロブ・リー)氏の話を紹介する。Pure Accelerate 2019では、「FlashArray//C」をはじめ、多数の製品が発表された。
最高のストレージアレイから最高のサービス企業へ
一見するとバラバラに見える製品発表だが、Rob Lee氏は「われわれは最高のストレージから最高のサービスに進化する」と強調する。
イベントで同社が発表した主な製品は以下の通りだ。
- 4ビットのQLCアーキテクチャのNANDを採用、Tier2アプリケーション向けと位置付ける「FlashArray//C」
- Intel Optaneを採用した高速化モジュール「DirectMemory Modules」
- Evergreen Storage Service(ES2)を「Pure as a Service」に改名
- Amazon Web Services(AWS)との連携機能の「Cloud Block Store for AWS」がGAに
- Microsoft Azure向けのクラウドバックアップ技術「CloudSnap for Azure」
- 仮想マシン環境の洞察を得られるサービス「VM Analytics Pro」
- Nvidiaと協業したAIワークロードパイプラインの「AI Data Hub」
Lee氏は「長い発表リストのように感じるが、全体で見ると最高のストレージ企業から最高のサービス企業にPure Storageが進化するためのパーツだ」と解説。「最高のサービス」のヒントは、基調講演でCEOのCharlie Giancarlo氏が打ち出した「Modern Data Experience」だ。
Lee氏は「われわれがやろうとしていることは、ハードウェア業界で進んでいるSCM(ストレージクラスメモリ)、QLMといった最高のリソースや技術を活用し、統合されたプロトコルスタックを組み合わせること。これにより、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドクラウドなどさまざまな実装形態で、よりコスト効率を改善できる」と説明する。
これにより、現在ストレージが抱える問題を解決できるという。具体的には「ストレージ管理者、データベース管理者、DBA、開発者がおり、DevOps、ソフトウェア自動化などの新しいやり方が生まれている。複雑を増しているが、解決のためにはシンプル、シームレス、そしてマルチプロトコル、マルチスタックのデリバリーサービスを構築する必要がある」と続ける。イベントで発表した新しい製品やサービスはそれを実現する技術部品だ。
サービス企業を目指すための戦略
同社は10月1日で創業10年目を迎えるが、これまではオールフラッシュのハードウェア、管理ソフトウェア、それにEvergreenサポートによる高速、軽量化、省電力化をハードウェアを買い換えることなく、コントローラーを交換することで実現してきた。今後はこの「Modern Data Experience」の下にサービス企業を目指す。
そこで重要になるのが、Pure as a Serviceだ。2018年に発表したオンプレミスの従量課金サービス「Evergreen Storage Service(ES2)」からの名称変更となる。同氏によると、名称変更の理由は2つあるという。
1つは、無停止アップグレードなどサポートサービスのEvergreenとの混乱があったこと。2つ目は、ES2がFlashArrayにフォーカスしていたのに対し、Pure as a Serviceは「FlashBrade」など他の製品にも拡大、さらにCloud Block Store for AWSを通じてAWS(パブリッククラウド)などの実装場所も広げるためだ。
Pure as a Serviceの今後の計画についてLee氏は「サービスとサブスクリプションモデルへ拡大を図っていく。今後、Modern Data Experienceに向けてポートフォリオを開発する過程で追加のソフトウェアが出てくれば、これを(Pure as a Serviceの下で)サブスクリプションモデルで提供するだろう」と述べるにとどめた。
同時に「最終的には、われわれの技術や製品を顧客に意味のある形で届けたい。ユーザーはサブスクリプションモデルを使うこともできるし、既存のモデルも選択できる。選択肢の提供が重要だと考えている」とも強調した。
そして、サブスクリプションの選択肢が加わることで同氏は「ストレージを長期的に考えることができる。これまでなら、“このアレイを3台”などと購入していたが、この種類のワークロードならどのストレージか、このレベルのパフォーマンスが欲しいならどれかという選び方が可能になる」と説く。
また、既存ストレージベンダーのやり方を「12歳の時に、将来何人子供を産むのかと考えて家を購入するのを迫るもの。われわれは家族の変化に合わせて家を変えていくことができるようにする」と話す。ES2のサービス提供が開始されて1年が経過しているが、すでにこのような購入をする顧客が出てきているという。
さらに、AWSやAzureなどパブリッククラウドとの連携により、この方向性をさらに補完できる。Lee氏は「ユーザーの最大のニーズは、オンプレミスのFlashArrayで動かしているアプリケーションをクラウドで動かしたいというものだ。Cloud Block Storeにより、これが可能になる。顧客はオンプレミスとクラウドをまたいで同じ機能、同じパフォーマンスでストレージレイヤーを構築でき、柔軟性も得られる」と語気を強めた。
Pure as a Serviceがサービス企業に向けたビジネスモデル側の部品とすれば、もう1つの重要な技術が管理ソフトウェア「Pure1」およびAIの「Pure1 Meta」だ。中でもパフォーマンスなど予測分析ができるPure1 Metaは、同社が顧客のニーズを把握する上でも重要な役割を果たしているようだ。
例えば、新製品のDirect Memory ModulesはFlashArrayに挿入するフラッシュモジュールだが、DRAMのような性能を誇り、高価なものになるという。
Direct Memoryが土台とするSCM、それにFlashArray//Cが採用するQLC(大容量、低コスト、低信頼性などの特徴を持つ)などの活用について同氏は「顧客がどのようにFlashArrayを使っているのかを理解するためにさまざまな分析を多数を行なった」と同氏は説明した。そこで、現時点で最大のメリットを提供できるのはリードキャッシュであるという結論に達したとのことだ。
これら最新技術についてLee氏は「まだ早期であり、顧客と市場の様子を見ながら進めていく」というが、例えばPure1 Metaを用いて顧客の利用やパフォーマンスを見て、営業が提案することが考えられるという。
「FlashArrayを何に動かしているのか、性能などの状況を見て、顧客と一緒にPure1 Metaを顧客と一緒に見ながら、ワークロードのパフォーマンスに追加が必要となればDirect Memoryを加えましょうなどと提案できる」と同氏は主張した。
さらに、NANDの種類が豊富になってきたことにより、競合との差別化がさらに明確になるだろうとも予想した。
Lee氏は「NANDは世代ごとに複雑になり効率が悪くなるが、Pure Storageはどうやってフラッシュを使うのかを深く理解している。例えばQLCは、いずれ競合も実装するだろうが、ソフトウェア側で正しい技術を持っていないので大したメリットは得られないだろう」と優位性を強調する。
最後にLee氏は、今後の目標であるModern Data Experienceについて「実現はまだまだ先だ。だがわれわれは部品を揃え始めている」と述べていた。