富士ゼロックスは9月25日、商品や製造工程の開発における熟練技術者の経験やノウハウを可視化し、品質課題の要因を特定する独自の品質課題解決手法(メカニズムベース開発手法)を確立したと発表した。具体的には、金型製作期間の1/3への短縮及び、品質課題の発生の1/10への低減の2点。
金型製作期間については、これまで熟練技術者が1年以上の期間をかけて現物を使ったトライアンドエラーで作り込んでいた金型を、新手法の導入により経験の浅い若手技術者が試作品を作らずに起工でき、不具合による手戻りを無くすことで、量産設計後の金型製作期間を従来の1/3に短縮できたという。
品質課題に関しては、従来は発生する度に生産設備の調整を行っていた生産プロセス(調整型生産)において、過去の対策で得た知識を同手法で整理し、品質を安定させる良品条件(要因)を特定してその改善を行った結果、発生頻度を1/10以下に低減したとのこと。
製造業の現場では、熟練技術者の経験やノウハウを言語化しないまま暗黙知として蓄積しており、過去の品質課題の解決で得た知識の組織的な活用が困難など、技術伝承が重要な経営課題になっているという。
このため、新たな商品開発の際に類似の品質課題を未然に防止できないなどの問題が依然として多く発生しているが、同手法によりその解決が見込めるとしている。
同手法は、従来伝承することが難しかった技術者の経験やノウハウを、品質・機能・物理量・設計項目の影響度合いとして可視化(4軸表)することで、品質課題の要因を特定できることが特徴という。
商品開発初期段階では、最小限の試作や実験で開発を進められるため、開発期間を短縮し、作りこみが不十分なことによる前工程への手戻りも軽減できるとしている。
また、設計変更が発生した場合にも、気をつけるべき二次障害を予測できるなど、トラブルの未然防止が可能になるという。
今後は、同社のイベント出展などを通じたユーザー企業のニーズ探索や技術評価を行いながら、IoTにより製造工程の品質や変化をモニタリングしデータ化する同社独自の仕組みという生産・品質情報管理システムと組み合わせ、製造現場のスマート化を目指した利用検討を進めていくとしている。