約135億年前に誕生した銀河形成の痕跡を見つけた、と東京大学や早稲田大学などの研究グループがこのほど発表した。約138億年前のビッグバンから約3億年後の宇宙最初期の銀河形成で、これまで宇宙観測史上最古とされた約133億年前の銀河より約2億年さかのぼる。距離で考えると人類がこれまでに捉えた最も遠い銀河となる。研究成果は11~13日まで熊本大学(熊本市)で開かれた日本天文学会で報告された。

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    宇宙誕生から約3億年後の約135億年前に形成されたとみられる銀河(左)の想像図と、その銀河が約7億年もの間に進化・老化して「老けた銀河」になった銀河の想像図(右)(国立天文台提供)

宇宙で最初の銀河がどのように誕生したかは宇宙観測上の重要テーマで、最も古い銀河はビッグバンから1億~5億年後に形成されたと推定されている。これまでは今回と同じ研究グループが見つけた約133億年前の銀河が最古とされていた。

研究グループには東京大学宇宙線研究所の馬渡健特任研究員や早稲田大学の井上昭雄教授、橋本拓也研究員のほか、国立天文台や放送大学、愛媛大学、米カリフォルニア工科大学の研究者も参加した。

馬渡特任研究員らは、「ろくぶんぎ座」などの方向にある「COSMOS天域」で宇宙誕生から約10億年後ごろの時代の、「年老いた」(研究グループ)恒星から成る「老けた銀河」に着目した。そして米航空宇宙局(NASA)のスピッツァー宇宙望遠鏡が撮影した近赤外線画像に写る3万7000もの天体の中から、日本のすばる望遠鏡の観測データなど膨大なデータを解析して6天体を選定。さらに南米チリのアルマ電波望遠鏡で超高感度観測を行った。

その結果、6天体のうち3天体は地球から約128億光年の距離にあり、誕生後約7億年経った「老けた銀河」だった可能性が高いことを突き止めた。このことは約135億年前に誕生した銀河形成の確かな痕跡を見つけたことを意味し、宇宙観測史上最古の銀河である可能性が高いと結論付けた。研究グループはこの3天体が宇宙の歴史上最古の銀河であると断定するためには尚、詳細な解析が必要としているが、2021年にNASAが打ち上げる次世代の宇宙望遠鏡の観測データで確認できそうだという。

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