電力中央研究所(電中研)、中国電力、北海道電力、大阪府立大学、OKI、非破壊検査の6者は9月17日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」の研究開発項目の1つである「従来法での計測不能領域を革新的手法により計測可能にする産業プロセス用センサー」の開発を開始することを発表した。

環境問題とエネルギー問題の双方の観点から、高効率な次世代火力発電プラントの活用が期待されているが、起動停止時や負荷変動時に生じる異常過熱によって伝熱管クリープ破断やエネルギーロスが生じやすくなるため、異常過熱箇所をリアルタイムで特定することが求められている。しかし、既存の高温用センサーは、計測精度、空間分解能、耐久性が低く、一般的なクリープ解析手法は計算に長時間を要することから、750℃以上の超高温で稼動する産業設備の温度分布、ひずみ分布、亀裂のオンライン監視とクリープ解析にもとづくリアルタイムでの余寿命評価は難しいとされている。

そこで今回の研究プロジェクトでは、750℃以上の高温下での安定的な計測を実現することを目的とした、「光ファイバセンサーの空間分解能向上のための信号処理技術の開発」、「光ファイバを750℃で長期間使用可能とするためのコーティング技術の開発」、「750℃で長期間使用可能で計測精度の高い光ファイバセンサーの開発」、「大規模クリープ解析技術およびそれを用いたデジタルツイン技術」、「オンライン監視システムの構築および実証」の5つの技術を開発することで、実構造のクリープ解析を可能にする技術の開発を目指すという。

  • 自己遅延ホモダイン光ファイバセンサー

    光ファイバセンサーの空間分解能向上を可能にする自己遅延ホモダイン光ファイバセンサーの原理イメージ (出所:OKI)

具体的なスケジュールとしては、2019年7月から2か年の計画で研究開発が進められる予定で、光ファイバセンサーの空間分解能向上のための信号処理技術の開発はOKI、750℃で長期間使用可能で計測精度の高い光ファイバセンサーの開発を電中研、中国電力、北海道電力、非破壊検査の4者、大規模クリープ解析技術およびそれを用いたデジタルツイン技術の開発を大阪府立大、オンライン監視システムの構築および実証を電中研、中国電力、北海道電力、OKI、非破壊検査の5者がそれぞれ担当する枠組みとなっている。

なお、同研究プロジェクトは将来的には、開発される各要素技術を組み合わせることで、超高温下で動作する設備・機器をデジタルで完全に再現するデジタルツイン化にもつなげていくことで、リアルタイムの状況把握を可能とし、装置の余寿命管理や装置動作への高精度なフィードバックによる省エネルギー化、ならびに熟練の技術者の暗黙知の伝承につなげていくことが見込まれている。

  • デジタルツイン技術による高精度なシステムフィードバック制御

    デジタルツイン技術による高精度なシステムフィードバック制御の実現イメージ (出所:OKI)