セブン銀行とNECは9月12日、NECの顔認証技術を搭載した新型ATMを開発し、9月より順次導入と入れ替えを開始すると発表した。新型ATMは「ATM+(プラス)」というコンセプトの下、金融サービスにとどまらない、さまざまなサービスが提供可能な機能を備えている。
新型ATMには、「顔認証機能、本人確認書類の読み取りによる本人確認」「QRコードの読み取りによる決済」「Bluetooth機能(スマートフォンにクーポンなどの情報発信を実現)」が新たに搭載されており、「できたらいいな」を実現する。これらの機能は、ATMの向かって左にある木目調のPlusエリアで利用できる。
具体的には、事前にPCやスマートフォンから入力された個人情報に基づきQRコードを出力し、このQRコードをATMで読み取るとともに、ATMに搭載されたカメラとスキャナーを用いて、顔と本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)を撮影することで、本人確認の手続きを行う。
10月下旬からは、スマートフォンで必要事項を事前に入力し、その情報をもとに出力されたQRコードをATMで読み取り、本人確認後、口座を開設する実証実験が予定されている。
また、上下2画面一体ディスプレイと大きな文字とアニメーションによるATM画面の採用、インターフォンなどの操作位置の変更、カップや杖を置く場所の設置など、使いやすさを重視したデザインが採用されている。
安全性の強化については、AIやIoTを活用して現金の需要やATMの故障を予測することで、「止まらないATM」を実現する。
セブン銀行 代表取締役社長 舟竹泰昭氏は「2001年に、『コンビニエンスストアにATMがあったらいいな』というユーザーの声に応える形で第1世代のATMが登場した。われわれのATMは社会インフラとして利用されており、今では全国に2万5000台設置されるまでになった。それから20年、社会も技術も大きく変化しており、ATMも進化する必要がある」と語った。
ただし、日本では現在、国を挙げてキャッシュレス決済を進めており、現金の利用が減っていくことは確実視される。そうした状況については、「キャッシュレスは進むだろうが、それについていけない人もいるだろう。われわれはそうしたニーズもくみ取り、誰一人取り残さない社会を目指している。アナログな社会とデジタルな社会の橋渡しをしたい。社会の変化は大きなビジネスチャンスだととらえている」と、舟竹氏は説明した。
また、NEC 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏は「2001年のプロジェクトから関わっていたが、『1台しか置けないから、絶対壊れてはいけない』『銀行ATMの半分のサイズにしなければならない』など、コンビニATMは銀行のATMでは考えられなかったような要件も多く、大変だった。第1世代から20年を経て、人も変わってきた。今回発表した第4世代は、デジタル化の時代に新たなサービスを提供できるプラットフォームとなる。共創しながら、新型ATMが人々の生活プラットフォームとなることを願う」と語った。
2020年夏までに都内、2024年度までにすべてのATMの入れ替えが予定されているが、新たな取り組みとして、前述したように、10月下旬からATMでの口座開設の実証実験が予定されている。
発表会では、ATMカードなどを使わずに、顔認証だけでATMから現金を引き出すデモが披露された。現時点でのサービス提供は予定されていないが、災害時の利用など想定しているという。また、高解像度のカメラを活用したヘルスケアサービスの提供、見守りネットワークなど、さまざまなサービスが計画されている。