台湾の半導体市場動向調査会社であるTrendForceは、2019年第3四半期のファウンドリ市場規模を、前四半期比(QoQ)13%増とする予測を発表した。

年下半期は通常、伝統的にピークシーズンの影響から、上半期に比べて大きく伸びるのが通例だが、2019年は最終製品の需要が伸びるには伸びるものの、その成長率は米中貿易戦争を中心とする世界経済の不確実性が増す影響から、前年同期と比べては低くなりそうで、TrendForceでは、下半期の半導体市場の回復は、前年同期比で大幅に弱まるという予測を述べている。

2019年第3四半期のピュアファウンドリトップシェアはTSMCでシェア率は50.5%、2位はSamsung Electronics(ファウンドリのみならず、システムLSI事業の売り上げも含む)でシェア率は18.5%、3位はGLOBALFOUNDRIESでシェア率は8%とそれぞれ予想されている。

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    2019年第3四半期におけるファウンドリ各社の売上高(予測値) (Eは予測値) (出所:TrendForce)

前年同期比での成長はTSMCとSamsungの2社のみ

トップシェアのTSMCは最先端プロセスとなる7nmを市場投入することで、Apple、中HiSilicon(Huaweiの半導体設計子会社)、Qualcomm、AMDなどの重要顧客からの需要を取り込むことに成功しており、7nmプロセスの稼働率も100%に近づくほどだという。また、併せていくつかのレガシープロセスの需要も戻りつつあるようで、そうした背景からTrendForceではTSMCの2019年第3四半期売上高を前年同期比で約7%増のプラス成長と予測している。

業界2位のSamsungのファウンドリ事業は、微細なプロセス技術を細分化することで、さまざまな要求に柔軟に対応できるように進めていることは注目すべき動きであるほか、5G対応スマートフォン(スマホ)の立ち上げに伴い自社チップが一部活用されており、こうした自社の他事業部からの需要を活用することで、市場の逆風を押し返そうとしている模様だ。

同社は10nmプロセスでQualcomm向け5GモデムチップX50の生産を担当しているが、同チップは、SamsungおよびHuawei以外の多くの5Gスマホに使われており、こうした恩恵も受けていることから、同社(システムLSI事業を含むので正確には非メモリ部門)の2019年第3四半期売上高は、同約3.3%増とのプラス成長を予測している。

ただし、ファウンドリトップ10社のうち、同四半期において業績がプラス成長となる企業はこの2社のみで、それ以外はことごとくマイナス成長となるとTrendForceは予測している。

3位のGFだが、ファブの売却や子会社化したASIC設計サービス会社の売却などを行ってきた。同社はこうした取り組みを最先端の総合チップファウンドリから専門性の高いプロセスのプロバイダとなる方針転換の一環だと説明し、RF SOI技術を使用して、ネットワークおよび通信に関連するアプリケーションからの収益を増やそうとしている。しかし、こうした事業売却の結果、売上高そのものの減少は避けられず、さらにAMDがTSMCの7nmの積極活用に動いていることもあり、GFの先端プロセスである12/14nmからの収入は減少する可能性が高く、今後の動向が気がかりとなっている。

なおTrendForceは、ファウンドリ市場全体が最近の米中貿易紛争の拡大により大きな影響を受けていると指摘している。米中両国による関税の引き上げ合戦は、家電市場の広範な範囲に影響を及ぼし、スマホ、ノートPC、タブレット、テレビなどの年間需要全体を押し下げているほか、両国間の貿易交渉の行き詰まりも需要低迷の大きな原因になっているとのことで、これらの諸事情により、一般に、例年ピークシーズンとなる年後半の需要の増加に関しては保守的な見方を維持している。