NTTドコモ、ノキアグループ、オムロンの3社は9月10日、5Gを工場などの製造現場で活用することを目指した共同実証実験の実施で合意したことを発表した。

製造現場では設備の故障を事前に防ぐ予兆検知や、歩留まりの向上に向けた設備稼働状況の把握などに向けてIIoTの活用が進められている。しかし、有線ではなく、無線を活用しようとした場合、設備稼働の際に生じる振動などさまざまなノイズが障害となり、安定した通信を確保することが難しいという課題がある。

今回の実証実験は5Gを活用して、こうした課題を克服し、工場での無線通信の有用性を検証しようというもので、実証内容としては「レイアウトフリー生産ライン」ならびに「AI/IoTによるリアルタイムコーチング」が想定されているという。

実証場所は、オムロンのPLCなどの制御機器の生産を担当している草津事業所で、オムロンからは工場という実際の環境に加え、FA機器や制御、製造に関する知見が、NTTドコモからは5G装置を活用した実証実験にともなる技術的知見が、ノキアからは5G基地局を含むプラットフォームと、フィンランドのノキアベル研究所で進められている通信に関する先端研究の知見がそれぞれ提供される予定。

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    実証実験における3社それぞれの役割

レイアウトフリー生産ラインは、自動搬送ロボットと、搬送ラインに沿って設置されるのではなく、それぞれを話した状態に設置した製造装置などを5G網でつなぎ、変種変量生産時代における最適な製造プロセスを模索しようという取り組み。「現在は、固定の機器を製品が渡り合うことになるため、工程が複雑化してしまっている。これを製造装置そのものを動かして、自由にレイアウトを変更できるようにすることで、生産効率の向上が図れるのかどうかを確かめる」(オムロン 執行役員 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 技術開発本部長の福井信二氏)とする。

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  • 左が旧来型の生産ラインに沿って設置された製造装置配置イメージ。右がレイアウトフリーの生産ラインイメージ。電源の確保をどうするのか、という問題を除けば、5Gでの通信により、レイアウトを自由にすることがやりやすくなるという

具体的には、従来、工業用イーサネットなどを用いていたPLCやSCADAなどに5Gの通信ユニットを取り付け無線化するとしているが、9月10日時点では、どのような周波数が向いているのか、どのような方法で実施するのか、といったことはまだ検討段階だとのことで、「周波数的には、干渉が少なく、装置的にも対応しやすく、(実験用周波数の使用に必要な)免許が取りやすいところを総務省と相談しながら、取得を目指す」(NTTドコモ 執行役員 5Gイノベーション推進室の中村武宏氏)という段階だという。

一方のAI/IoTによるリアルタイムコーチングは、さらに将来的な5G活用を見据えた取り組み。セルラインに取り付けられている100個以上のセンサ各種を活用することで、リアルタイムで人の動きを把握。それをAIコーチが作業者にリアルタイムでフィードバックすることで、習熟のサポートを目指そうというもの。無数のセンサを同時にネットワークに接続しつつ、低遅延でAIの処理結果をフィードバックさせる必要があることから、そうしたことが可能な5Gでの実証を行おう、という話になったという。

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  • AI/IoTによるリアルタイムコーチングのイメージ。作業者の動きなどをセンサで把握、それを5Gでクラウドなどを用いたAI処理に送信、その結果をリアルタイムで現場にフィードバックすることで、習熟度の向上を目指す

なお、オムロンでは11月27日~29日にかけて東京ビッグサイトにて開催されるオートメーションと計測の先端技術総合展「IIFES 2019」にブースを出展。その中で、今回の5Gを活用した取り組みについて、実機を用いるなどの形で、具体的なイメージを提示。その後、年内にそうしたイメージに基づいた実験の本格開始を進め、1~2年ほどをかけて実用性などを確認していきたいとしている。

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    左からNTTドコモ 執行役員 5Gイノベーション推進室の中村武宏氏、オムロン 執行役員 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 技術開発本部長の福井信二氏、ノキアソリューションズ&ネットワークス 執行役員 NTT事業本部長の木田等理氏