和歌山県とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は9月9日、NTTセキュアプラットフォーム研究所が開発した保有するデータを秘匿化したまま統合・分析ができる秘密計算システム「算師」を用いて、データの利活用行う連携協定「データサイエンス分野における連携に関する協定」を締結した。

この協定に基づいて、両者は産業の活性化や社会課題の解決およびデータ利活用のための人材育成に関する実証実験を2019年度内に実施する。

  • 調印式の様子。NTTコミュニケーションズ 西日本営業本部長 江村俊英氏(左)と和歌山県 企画部長 田嶋久嗣氏(右)

実証実験では、和歌山県データ利活用推進センター、実験に協力する事業者および大学に秘密計算専用端末を設置し、NTT Comのクラウドサービスを通じて分析用データを提供する。あわせて、大学で教材として利用するなど、データサイエンス分野(AI、ビッグデータ分野)の人材育成に活用する。

  • 協定の概要

今回利用する秘密計算は、データを複数の断片化したデータに変換して利用するもので、断片化した個々のデータは意味を持たないため、データを秘匿したまま計算が可能だという。

暗号化を用いた場合は、データを一度平文に戻す必要があり、セキュリティの観点からデータの相互利用が進まないという課題がある。今回の秘密計算を利用することで、情報漏えい対策を実施しながら複数企業の情報を用いた横断分析が可能になる。また、複数の企業の情報を合わせて分析する場合、自社のデータを他社に対して秘匿した状態で相互利用が行えるメリットがある。

  • 協業で秘密計算ビジネス化を推進

今回利用する秘密計算システム「算師」では、1つのデータを失っても、残りの断片から復元が可能で、分散時にハッシュ値などの情報を取得しておくことで、破損や改ざんの検知が可能だという。

  • 秘密計算の概要

NTT Com ソリューションサービス部 担当課長 櫻井 陽一氏

さらに、NTT Com ソリューションサービス部 担当課長 櫻井 陽一氏は、企業では生データを扱える人と、秘匿した情報のみを扱える人の権限を分けて管理している場合があるが、秘密計算を使えば、両者が同様の権限でデータを扱えるメリットがあるとした。

ただ、秘匿した情報であっても、個人情報保護法の対象になるので、そのルールにしたがって、情報を扱う必要はある。

  • 秘密計算の特徴

総務省及び独立行政法人統計センターは昨年4月、政府関係機関の地方移転の一環として、総務省統計局・独立行政法人統計センターが所管する「統計データ利活用センター」を和歌山市に開設した。これにあわせ和歌山県は「和歌山県データ利活用推進センター」を設置し、「統計データ利活用センター」と連携しデータサイエンス人材の育成や民間企業のデータ利活用推進に取り組んでいる。

和歌山県データ利活用推進センター センター長 中内啓文氏

和歌山県データ利活用推進センター センター長 中内啓文氏は、「今回の提携は、官民のデータ連携、新たな知見を生み出す分析、データサイエンティストの育成などの取り組みのモデルになればと思っている。これによって、企業の刷新、新たな変革を意識した強い企業体制の構築に向け取り組んでいきたい」と語った。

今回の協定では、以下の5つを検証する。

①秘密系技術がデータ解析にどうフィットするのかという社会実装に向けた研究
②行政情報と民間のデータを融合したデータ分析における秘密計算技術の有益性の研究
③民間データ活用における課題を払拭し、活用を促進する取り組み
④データサイエンティストの育成
⑤今回の協定の目的を達成するために必要な事項の洗い出し

  • 協定における検証内容

  • 秘密計算の活用

今後のスケジュールは、NTT Comが中心となり、今年の12月までに実証環境の構築を行い、それ以降、データの蓄積や分析手法の選定、および大学における教材としての利活用の検討を行う。

  • 今後の展開