島津製作所は、9月4日から6日にかけて幕張メッセにて開催されている分析機器・科学機器専門展示会「JASIS 2019」にて、その場で手軽に測定を可能とする小型デジタルイオントラップ型質量分析計「MALDImini-1」のデモなどを行っている。
同装置はMALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)技術を搭載した質量分析計(MALDI-MS)の新たな可能性を切り開くことを目的に「Minimum footprint」、「Minimum time」、「Minimum sample volume」をコンセプトに開発されたもの。A3用紙以下のフットプリントという省スペースさと100V電源対応、そしてオプションのガスカートリッジをガス供給源として活用することで、研究室のラボベンチや実験台に設置して、活用することを可能とする。
会場に居合わせた同社のシニアフェローで質量分析研究所の所長を務める田中耕一氏(2002年のノーベル化学賞受賞者)に話を聞く機会をたまたまいただいたが、同氏は同装置を「確認と発見の両方を研究者が自ら行える装置」と表現。また、「学生でも、測定の仕方を30分~1時間程度のチュートリアルを受けたらすぐに使える。それで自分の作りたいものができているか、抽出できているかの確認のためにちょっと使ってみる、といったことができるようになる」と、使いやすさも追及したことを強調していた。実際に、ブースで行われていたデモでも、測りたいサンプルを塗布した状態のプレートを装置に挿入した後、数分ほどの真空引きをして、PCの専用ソフト上のスタートボタンを押すだけで、分析を開始、即座にMS(質量分析)の結果が表示される様子や、さらにピークを選んでMS/MS分析やMS3の実施を簡単に行える様子が示されていた。
「研究の際に、自分が期待したものと違う結果が出た。それをこれを使って、なぜ違っていたのかをその場で自分で調べることができる。そうした取り組みがうまくいけば、世界初の発見につながるかもしれない。サンプルの調整から分析まで一貫して自分の手元でできるし、どこかに分析を依頼して、結果が返ってくるまで待つ間の時間も試行錯誤に費やすことができる」(同)と、時間を有効に活用できるようになるとしており、実際に自らアピールを行った米国のカンファレンスでは、来場者からの反応は上々であったという。
さらに同氏は、「失敗は大天才でない限り起こる。失敗したから、そこから先に進むのをやめる、ということではなく、もう一度気持ちを奮い起こして研究をやり直す。そういう人のために作った」と、同装置の開発に至った思いを語る。
同社ブースのデモ実演では、合成O-結合型糖べプチドのMS3が行われていたが、同等サイズでこうしたレベルの解析ができるのは、ほかにほぼない状況だとのことで、研究者が自分の傍に置くことで、研究の促進を図ることができるようになることをアピールしていたほか、さまざまな分野での活用方法の模索を進めていくことで、対応アプリケーションの拡大なども図っていきたいとしていた。