日本オラクルは今年5月、第2世代Oracle Cloudのデータセンターの東京リージョンを開設、年内には大阪リージョンの開設も予定しており、国内におけるクラウドビジネスを加速させている。

とはいえ、ご承知の通り、パブリッククラウド市場では、既にAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platformがシェアを獲得しており、そこに割って入っていくことは簡単ではない。

そうした中、オラクルが同社のクラウドサービスのアドバンテージとして掲げているのが「企業向けクラウドとしてのポテンシャル」だ。今回、Oracle Cloud Infrastructure Director of Product Management カラン・バッタ氏に、どのような点において、同社のクラウドが企業向けクラウドとして競合に勝っているかについて聞いた。

  • Oracle Cloud Infrastructure Director of Product Management カラン・バッタ氏

企業が必要とする性能を提供できるクラウド

オラクルは、第2世代Oracle Cloudを企業のために作られたクラウドと定義している。つまり、セキュリティ、料金、拡張性など、旧来のクラウドが応えきれなかった企業のニーズを満たすことを主眼としている。「第2世代Oracle Cloudは、企業のための完全かつ妥協なきクラウド」と、バッタ氏は話す。

  • 第2世代Oracle Cloudの概要

例えば、第2世代Oracle Cloudでは、HPC、GPU、VMをコンピュートサービスとして提供している。バッタ氏は、これらのサービスについて「他社のサービスと比べた場合、同じコストで高い性能を享受できる」と説明する。

HPCインスタンスでは、RDMA(Remote Direct Memory Access)に対応することで、2マイクロセカンドという低レイテンシーを実現しているという。HPCやGPU(RDMA対応予定)を必要とするワークロードは、負荷が高くネットワーク・パフォーマンスが必要になることを見込んでのことだ。

「顧客はクラウドサービスを利用する際、性能を気にしている。だから、われわれは性能の改善に尽力する」とバッタ氏。同社が実際に性能を改善できる背景に、「サン・マイクロシステムズを買収したわれわれはデータベースベンダーであるとともに、ハードウェア・エンジニアリングの技術も持っている。だから、システムのビルドもデプロイもすべて自分たちでできる」(同氏)がある。

「われわれはクラウドカンパニーであり、ハードウェアのテクノロジーカンパニーでもある」(バッタ氏)

企業が求めるミッションクリティカルなハードウェアを開発して提供できるベンダーはそれほどいない。確実に、同社の強みの1つであろう。

オンプレミスと同等の性能をクラウドでも実現

オラクルは2017年にHPCソリューションを提供する米国Altairと業務提携を行っている。目的は、Oracle Cloud Platform上でAltairのHPCソリューションを構築・提供するためだ。

Altairと自動車のクラッシュをシミュレーションするサービスを検証したところ、「他社のクラウドではできなかった。性能が高いOracle Cloudだからこそできた」と言っていたという。

また、日本の顧客である自動車会社もこれまでオンプレミスで行ってきた自動車のクラッシュのシミュレーションをOracle Cloudで検証したそうだ。

クラッシュのシミュレーションにおいては、衝突した時の衝撃、散財したものの関係性が重要であることから、レイテンシーの低さが重視されるという。「Oracle Cloudなら。オンプレミスでInfiniBandを利用した時と同等の性能を得ることができる」とバッタ氏。

「われわれのコンセプトはシンプル。クラウドだからといって、性能とパフォーマンスで妥協しない。オンプレミスと同等の機能をクラウドでも提供する」と、バッタ氏は話す。

ブロック・ストレージはライバルのAWSの10分の1の料金

さて、オラクルがOracle Cloudのウリとしてもう1つ挙げるのが「料金」だ。オラクルと言えば、「高品質だけど、料金も……」という印象を持っている人もいるだろう。

バッタ氏は「今回、第2世代Oracle Cloudにおいて、コストが採用の決め手となるよう、最適化を図った。そして、コストパフォーマンスも追及した」と語った。

さらに、「クラウドは常時使っていると、その分だけ料金がかかってくるので、高くなる。つまり、必要な時だけ使えば、料金を抑えることができる」と指摘した。

以下は、オラクルが算出したOracle CloudとAWSの料金の比較だ。VM、ブロック・ストレージ、ネットワークのいずれもOracle Cloudが安価になっている。スペックにもよるだろうが、ブロック・ストレージとネットワークはAWSの10分の1以下だ。

バッタ氏にその理由を聞いてみたところ、「AWSの料金体系はトラディショナルなモデルだ。ギガバイト当たりの料金設定であり、使えば使うほど高くなる。これに対し、Oracle Cloudはベストパフォーマンスを保証した上で、ギガバイト当たりの料金を設定している」という答えが返ってきた。

  • 第2世代Oracle CloudとAmazon Web Servicesの料金比較

オラクルは、Oracle Cloudにおいて、オンプレミスと同等の性能を提供しながら、クラウドならではのメリットを提供するという。バッタ氏は「性能とコストはわれわれが責任を持つので、企業はクラウドを利用することで、イノベーションに注力してほしい」と話す。

クラウドサービスを導入した企業の中には、想定上に料金がかかったため、オンプレミスに戻っている企業もあると聞く。Oracle Cloudのコスト戦略がクラウドの導入や移行に逡巡している企業を後押しするものとなることを期待したい。