半導体市場動向調査会社である台湾TrendForceが、2019年第2四半期(4~6月)の半導体ファブレスIC設計企業の売上高ランキングトップ10を発表した。

それによるとトップのBroadcom以下10位までの順位は、前年同期と変化がなかったという。また、上位5社のいずれもの業績が前年同期比でマイナス成長となったことが注目されるとする。

TrendForceでは、このマイナス成長の要因として、米中貿易戦争の激化、サプライチェーン全体にわたる在庫の増加、コンシューマエレクトロニクス(スマートフォン、タブレット、ノートPC、LCD、テレビ、サーバなど)の世界規模の需要低迷を指摘している。ファブレストップ5の中でも、とりわけNVIDIAが前年同期比20.1%減と大きく落ち込んでおり、同社が3四半期連続でマイナス成長を記録したのは、この直近3年間で初めてのことだという。この結果は、グラフィックスおよびデータセンター向け製品の売り上げが大きく減速した結果だという。

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    表1 2019年第2四半期における半導体ファブレスIC企業の売上高ランキングトップ10。(E)は企業が業績未公表のため、TreodForceが推測した値 (単位:百万ドル)(出所:TrendForce)

米中貿易戦争で沈む米国、躍進する台中

TrendForceアナリストのChia-Yang Yao氏は、「米中貿易戦争の激化で中国の国内需要が弱まり、中国の電子システムサプライヤが電子部品の在庫を極力少なくしたため、中国の半導体需要は弱含みとなった。このため、中国の半導体市場の主役ともいえるBroadcomとQualcommの2019年第2四半期の売上高はともに前年同期比でマイナス成長となった。特に、Qualcommは、開発スピードの速い競合相手の台MediaTekおよび中国のスマートフォンチップサプライヤであるUNISOC(清華紫光集団傘下)との激しい競争に直面している。MediaTekは2018年からモバイルプロセッサ製品向けに12nmプロセスを採用しており、コスト対性能比率を強化し、製品の価値を高めることに成功。中低価格帯の市場でQualcommを尻目に存在感を高めているという。また、UNISOOCは低価格帯およびミドルレンジのプロセッサにCortex-A55およびA75 CPUを実装し、顧客により幅広い選択肢を提示し、Qualcommに脅威を与えている」と台中のファブレス企業が鈍るQualcommの動きをよそに攻勢を強めていることを説明している。

ちなみにMediaTekの2019年第2四半期の売上高は前年同期比1.8%増の615億6700万NTドルで、売上総利益率も回復を続けているが、この売上高増加率もドルに換算すると為替レートの影響で同2.7%減とマイナス成長になってしまっている。

このほか、プロセッサおよびデータセンターセグメントで好調のAMDだが、GPU、ブロックチェーン、およびセミカスタム製品の売り上げが低迷した結果、前年同期比で見た場合の売上高は2桁%減となった。また、Xilinxは、FPGAという特殊性を活かし、データセンター向けが減速したものの、産業、通信、車載向けの各分野で業績を伸ばすことで、同24.3%増と大きくプラス成長を果たした。さらにMarvellも、通信市場での需要増の恩恵を受ける形で、苦戦が続く米国企業の中にありながらも、Xilinxとともにプラス成長を遂げる結果となった。

一方の台湾勢となるNovatekとRealtekだが、NovatekはタッチパネルコントローラICとディスプレイドライバICを1チップ化した「TDDI(Touch and Display Driver Integration)」が、AMOLED(有機EL)ドライバチップ需要を背景に中国のスマートフォンサプライヤから関心を集めた結果、前年同期比18%増、RealtekもPC、コンシューマ機器、通信といった市場からの引き合いが高まったこともあり、同30.2%増を達成した。

10位に滑り込んだのは英Dialog Semiconductor。2019年第1四半期に10位に入った米Synapticsが、モバイル分野での業績悪化によって売り上げを低迷させた隙を突いて、カスタマイズされたミクスドシグナル、オーディオ、通信関連ソリューションで売り上げを伸ばす形で10位に入った。

なお、半導体市場は伝統的なピークシーズンに突入しているにもかかわらず、米中貿易紛争は第3四半期に入っても解決の兆しすら見えてこない。世界中の主要なファブレス半導体企業が今後も成長を維持できるかどうかは、各社の販売戦略が米中貿易紛争によってもたらされる市場リスクをいかに分散できるかにかかっているとTrendForceは指摘している。