理化学研究所(理研)のスーパーコンピューター(スパコン)「京(けい)」が多くの研究機関などとの共用運用を終えて30日にシャットダウンする。日本を代表するスパコンとして7年近くにわたって数多くの成果を上げてきた「京」はその役目を2021年ごろに運用開始を予定する後継機「富岳(ふがく)」に引き継ぐ。
京の開発計画は政府が主導して2006年に始まった。約1110億円をかけて理研と富士通が共同で開発を進めて2012年9月に共用運用を開始した。毎秒1京回(京は兆の1万倍)計算できる能力を持つ。国内外の大学や公的研究機関や企業などに活用され、地球環境や防災、生命科学、医学・医療といった分野の公的研究ばかりでなく、数多くの企業の開発研究に貢献した。既に今月16日に研究機関や企業による共用運用を終了。その後膨大なデータのバックアップ作業などを行っていた。30日にはシステム自体をシャットダウンし、関係者による式典を予定しているという。
京は共用運用前の2011年にスパコンの計算速度の世界ランキングで2回連続世界一に輝いた。しかしその後、中国や米国のスパコンに押されて順位を大きく落としていた。このため政府は「次世代スパコン」を開発する方針を決め、2014年度から富士通と共同で後継機開発が進められてきた。
富岳は、2021年ごろの運用開始を予定しており、京の約100倍という世界最高水準の計算速度を目指している。京と同様に理研計算科学研究センター(神戸市中央区)に設置される。スパコンの威力が発揮される地球環境・気候変動や自然災害対策などの分野のほか、人工知能(AI)や生命科学など幅広い分野で京に勝る活用、運用成果が期待されている。
富岳の名前は公募で決まった。京の上の単位である「垓(がい)」や「兆」など、約5200件の応募の中から富士山の異名である富岳が選ばれた。理研は選定理由として「世界中の人々にとって親しみやすいことを期待した」としている。
理研は27日、富岳のロゴマークを発表した。富士山をかたどり、富士山の高さが富岳の性能の高さを表し、また富士山の裾野の広がりが共用利用者の拡がりを意味するという。
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