組み込みMRAM(eMRAM)は、大手ファウンドリやIDM、大手の製造装置サプライヤが関心を高め、事業強化を図っているおかげで、市場成長に機運が高まっており、今後の5年間の年平均成長率(CAGR)295%、2024年には12億ドルの市場規模に達する見込みであるとの調査予測を半導体市場調査会社である仏Yole Développementがまとめた。ただし、一般的なMRAM市場は、eMRAMほど成長期待があるわけではなく、CAGRは54%、2024年の市場規模は5億8000万ドル程度にとどまるとも同社は予測している。
現在、組み込みメモリとして活用されているeFlashは、28nm/22nm世代が、最後のプロセス世代となるとの見方が業界内では強いが、これは微細化の限界ではなく、経済的な理由によるところが大きいという。そのため、半導体業界はeFlashに変わる、コード/データストレージ用の新たな組み込み用の不揮発性メモリ(NVM)の実用化を図る必要がでてきている。また、揮発性であるSRAMの微細化のスピードも遅くなっており、セル面積の縮小が困難になってきていることもあり、高密度実装が可能な新たな組み込みメモリそのもののニーズも高まっているといえる。
次世代の不揮発性メモリ技術の中でも、勢いがあるのがスピントランスファートルク磁気抵抗RAM(STT-MRAM)で、すでに28nm以下の微細プロセスで製造されるさまざまなICへの組み込み用として活用する準備が整っており、低消費電力のウェアラブルおよびIoTデバイス、マイコン、自動車、イメージング、ディスプレイIC、エッジAIアクセラレータなどでの活用が期待されている。
「2018年、組み込み向けSTT-MRAM市場はまだ限定的で、大量出荷はされなかった。しかし、2019年はこの市場が飛躍する年になる」とYoleの技術および市場アナリストであるSimone Bertolazzi氏は予測している。韓Samsung Electronicsは最近、eMRAMの量産を開始したが、Yoleでは、他の主要なファウンドリ/IDMも近々にSamsungの後を追って競争に参加するとみている。
こうした動きに呼応するように、Applied Materials(AMAT)、Lam Research、東京エレクトロン(TEL)、キヤノンなどの製造装置サプライヤ、ならびにQualcomm、Arm、Synopsisなどの半導体およびツールベンダがMRAMに対する研究開発費を増やしており、これによりeMRAMのビジネス化がさらに加速するとYoleでは見ている。
一般的なMRAMはエンプラ向けの高密度化に期待
一方、一般的なスタンドアロンタイプのMRAM市場は、米Everspinや米Avalanche Technology/ソニーセミコンダクタソリューションズなどのいくつかのキープレーヤーによって製造された16Mビット以下の製品によってけん引されてきた。
また、今後の同市場は、主にエンタープライズストレージアプリケーションによってけん引されるものと同社ではみており、SSDキャッシングとストレージ/ネットワークアクセラレータを中心に、256Mビット以上の高密度化されたSTT-MRAMが採用されていくとしている。中でもGLOBALFOUNDRIESの28nmプロセスを使ってEverspinが1Gビット STT-MRAMのパイロット生産を開始したことは注目すべき点で、これが市場に出てくるようになると、同市場の成長を引き起こす可能性が高まるとYoleでは指摘している。