半導体市場動向調査会社の台TrendForceは、2019年第2四半期(4~6月期)のNAND市場の動向調査結果を発表した。それによると、オフシーズンの第1四半期から回復したこともあり、総ビット消費量は前四半期比15%増となったものの、在庫の解消にまではいたっておらず、契約価格の下落などもあった結果、売上高は同横ばいの約108億ドルに留まったという。
第3四半期はピークシーズンであるため、NANDの需要を押し上げると見られるが、経済紛争などの影響から、その需要は2018年よりも弱くなると同社では分析している。ただし、NANDの供給量は、6月に発生した東芝メモリの四日市工場の停電の影響から減少したこともあり、第3四半期の契約価格の下落幅は縮小する見通しで、出荷数量の伸びに伴い、市場規模は第2四半期を超える可能性が高いとの見方を示している。
大手サプライヤで唯一2桁成長を達成したSamsung
シェアトップのSamsung Electronicsの第2四半期の出荷ビット数量は、サーバ需要の回復、各種機器での大容量メモリ品の採用件数の増加、スマートフォン向け注文の増加などの影響から、前四半期比30%増となった。また、需要の増加に伴い、平均販売価格も同15%減と下げ幅を縮小したこともあり、同事業の売上高は同16.6%増の37億6600万ドルと、大手NANDサプライヤ中で唯一2桁のプラス成長を達成した。
同社の生産能力を分析すると、顧客の需要を満たすためにV-NANDへと移行する動きを見せており、第12ラインでの2D NAND生産を縮小させていく模様だという。こうして解放されたスペースはR&Dに使用される予定だという。また、3D NANDに関しては、意図的なまたは人為的な生産能力の削減が行われない限り、投入ウェハの規模は第1四半期の規模と同等になると予想される。
同じく韓国系のSK Hynixの同四半期の出荷ビット数量は、中国の一部顧客からの注文増などもあり、前四半期比40%増と大きく伸びた一方で、平均販売価格は同25%減と低下した結果、売上高は同8.1%増の11億600万ドルとなった。
同社は、NANDウェハの投入数を前年比で15%削減すると発表している。これは主に、2D NANDプロセスの生産を削減して、それよりコスト競争力がある3D NAND生産に移行する計画によるものである。新しいM15ファブの生産能力拡張は引き続き予定通り行われるが、3D NANDウェハの投入はゆっくりと着実に増加させ、その大半にTLCアーキテクチャを適用することで、投入枚数を増やさないことにしている。同社、今年もQLC製品を大量生産する予定はない。
シェア2位の東芝メモリは、サプライヤ側での積極的な在庫積み増しが奏功。第2四半期に勢いを取り戻し、出荷ビット数量は最大で5%増ほどとなったと見られる。しかし、契約価格のさらなる下落により、平均販売価格は約15%減となり、結果として売上高も同10.6%減の19億4800万ドルにとどまった。
同社は6月に発生した四日市工場の停電の影響を大きく受けている。生産ラインは7月中旬までにすでにほぼ通常運転に戻ったが、それでも市場全体の供給に与えた影響は大きく、世界の年間NAND生産量は2019年初頭の予測量と比較して3%ほど減少する見込みだという。
また、東芝メモリのパートナーであるWestern Digital (WDC)は2019年第1四半期に生産を削減することを決定したため、第2四半期の出荷ビット数量の伸びは当初、他のサプライヤよりも低いと予測されていた。さらに、米国政府のHuaweiへの輸出禁止政策の影響から、販売を一時停止。商務省との協議の後、Huaweiへの出荷を再開するための承認を受けたが、出荷は1か月ほど中断されるなどしたことから、出荷ビット数量は同1%減となった。ただし、生産を減少させたために平均販売価格の減少は同6%減にとどまったことから、売上高は同6.5%減の15億6000万ドルとなった。
Western Digitalと同じく米国系のMicron Technologyは、米国政府のHuaweiへの輸出禁止措置の影響をもろに受けた結果か、出荷ビット数量は同5%減、平均販売価格も同15%減となり、同事業の売上高は同17.7%減の14億6100万ドルに留まった。生産能力に関しては、第2四半期に第1四半期比で5%削減すると発表していたが、後に同10%減へと、削減率を引き上げている。
Western Digital、Micronと同じ米国系のIntelは、第1四半期に財政状態が悪化したため、中国の大連工場における生産拡大計画を延期した。現在、64層品が出荷の大部分を占めているが、クライアントに96層品の採用を促すなど、大容量製品を積極的に売り込もうとしている。その結果、同四半期の出荷ビット数量は20%以上の増加となったものの、平均販売価格が約15%減となったこともあり、同事業の売上高は同2.7%増の9億4000万ドルに留まった。ちなみに、Intelの大連工場は、2019年末まで生産能力の拡張を中止するという第1四半期の計画に沿っており、顧客による96層製品の採用に合わせて、製品の移行は緩やかに進められていく模様だという。