半導体市場動向調査会社である台湾TrendForceは、2019年第2四半期(4~6月期)のDRAM業界の動向および各DRAMサプライヤの動向に関する調査結果を発表した。

それによるとコモディティDRAM、サーバDRAM、コンシューマDRAMを含むさまざまなDRAM製品の第2四半期の大口顧客向け見積価格は前四半期比で30%近く減少したという。特にサーバDRAMの価格がもっとも下落し、およそ35%程度の下落幅となった。また、ディスクリート・モバイルDRAM/eMCPだけは価格下幅幅が10~20%程度にとどまったという。この結果、第2四半期の販売ビット数量は前四半期比で増加したが、価格が下落しつづけたため、市場でのDRAM売上高は前四半期比9.1%減という結果となった。

7月初旬に半導体材料の輸出に関する日韓の紛争が生じた結果、DRAMのスポット市場価格は跳ね上がったが、スポット市場の規模は小さすぎるため、DRAMサプライヤが保有する大量の在庫を第3四半期に効果的に減少させるには至らないとみられている。また、最終製品の需要は相変わらず弱く、7月も契約価格は下がり続けており、有力PCメーカーによって設定された価格から読み解くと、主流の8GBモジュールの平均販売価格は前四半期比で20%近い下落、前月比でも約10%の下落となる25.5ドルに低下しているという。

TrendForceは、日韓の輸出問題で生じたスポット価格高騰という市場の動きにもかかわらず、大口契約価格は主に基本的な需給のダイナミクスに依存し、生産能力も実質的に影響を受けなかったため、契約価格を引き上げるような顕著な要因は見出せないと指摘している。さらに、出荷量の70%を占めるモバイルDRAMとサーバDRAMの契約価格は、第3四半期も引き続き下落傾向にあるという。

  • DRAMサプライヤ

    自社ブランドDRAMサプライヤの売上高ランキング (出所:TrendForce)

大手3社ともに営業利益率が低下

大手DRAMサプライヤの収益性を見てみると、第2四半期も急激な価格の下落により、Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyの大手3社ともに営業利益率は低下した。Samsungの営業利益率は前四半期の48%から41%へと低下したものの、大手3社中でもっとも下げ幅が引くく、DRAM事業の粗利益率は50%超を保つことができた模様だ。業界2位のSK Hynixは、工場建設などの影響もあり、営業利益率は前四半期の44%から28%へと急落。3位のMicronは会計年度の期が異なるので、直接の比較はできないが、3~5月期の営業利益率は、大口顧客見積価格の下落により前四半期の46%から35%に低下している。これら大手サプライヤの収益性は、価格の下落が続く第3四半期にはさらに低下するものとTrendForceは予測している。

また、技術開発に関しては、Smusungは当初計画のとおり、平沢(ピョンテク)工場にて、華城(ファソン)工場ライン17とともに6万枚の新規投入を予定しており、平沢工場の2階は1Y-nmプロセスに移行する予定であるが、DRAMの在庫レベルがまだ高いため、予定よりもゆっくりと進行する見込みである。SK Hynixは、先行して投資を行ってきた1X-nmプロセスで製造した製品の出荷比率がすでに40%を超えており、下半期には従来の2Y-nmおよび2Z-nmプロセスが新たな10nmクラスのプロセスへ移行する見込みであるという。Micronは、Micron Memory Taiwan(旧Rexchip)がすでに1X-nmプロセスへの移行を完了しており、1Y-nmプロセスをスキップして1Z-nmプロセスへ移行する予定であるが、実際にその生産が開始されるのは2020年になる予定である。Micron Technology Taiwan(旧Inotera)も、総生産量の半分以上が1X-nmプロセスになっており、2019年中に1Y-nmプロセスの採用が徐々に増加する見通しだという。

大手3大サプライヤ以外のDRAMベンダの集積地である台湾の中小サプライヤの動向だが、NANYAは第2四半期に出荷ビット数量が30%と跳ね上がったため、価格下落にもかかわらず前四半期比8.4%増のプラス成長となり、ビット出荷数量の伸びから、粗利益率が前四半期の40.7%から34.9%、営業利益率も同26.6%から22.5%と比較的小さな落ち込みにとどまった。Powerchipは、コモディティDRAM製品(DRAMファウンドリの売り上げを除く)の売上高が前四半期比15.5%減となったほか、Winbondの売上高はほぼ横ばいとなった模様である。