ヤンマーは8月8日、同社のグループ会社であるヤンマーエネルギーシステム(YES)が、従来の省エネ機器の販売に加え、顧客のエネルギー課題の解決に向けた組織体制を構築し、本格的なエネルギーソリューション事業の展開を行っていくことを明らかにした。
YESは、これまで省エネ対策やエネルギーの効率利用を推進するガスヒートポンプエアコン(GHP)やコージェネレーションシステム(熱電供給)、非常用発電機などを扱ってきた。今回の新たな事業展開は、こうした機器の販売に限らず、それらを活用したソリューションとして、顧客が抱えるさまざまなエネルギー関連の課題解決策の提供を行っていくものとなる。
具体的には「創エネ」「再エネ」「熱電」の3つのソリューションを展開していく。創エネ事業は、従来から発電機や空調設備などの提供を行ってきたが、ソリューションとしてはそうした機器販売に加え、エネルギー診断や、その診断結果に基づく提案などを顧客ごとのニーズを踏まえて、課題解決につなげていくという取り組みを行っていくという。
再エネでは、下水の廃水処理時などで発生するメタンガスを活用して発電を行うバイオガスコージェネレーションシステムやてんぷら油や工場油などの廃油を燃料とするバイオディーゼルコージェネレーションシステムなどの提供を行ってきたが、そうしたシステム提供に加え、FIT発電事業にも新たに参入するという。仕組みとしては、下水処理場などの施主からYESがバイオガスを購入し、YESが事業者としてそれを活用して発電を実施、売電を行い、収益を上げる、というもの。すでに栃木県の栃木市藤岡町の大岩藤浄化センターならびに同県下都賀郡野木町の思川浄化センターの発電事業者として選定を受けており、10月より順次稼動を開始し、これを皮切りに、未導入の自治体は民間施設に対して提案活動を行っていくとする。
同社は、発電事業者として、10万kWを超すような大規模バイオマス発電を行うのではなく、小規模分散による地産地消を提案していく方針で、発電機器の性能や要件を熟知している機器メーカーだからこそできる取り組みと説明する。
また、現在は実証実験中の取り組みだが、稲を脱穀した際などに発生する籾殻をガス化して発電する仕組みも考案。籾殻の野焼きが大気汚染などの観点から禁止されることから、籾殻の新たな処理方法として研究が進められているもので、煙も臭いもなく、発がん性物質も発生せず、しかも燃焼後に残るくん炭は無害であり、それを農地にまくことで土壌改良や農地還元が可能であることも分かってきたとしており、農家や農業法人向けに2020年度をめどに商品化を目指すとしている。
熱電では、顧客の光熱費の削減やエネルギー機器の管理容易化といったニーズに対応することを目指した独自のエネルギーマネジメントシステム「Y-EMS」を開発。発電装置や空調設備、冷温水機、貯湯槽といった熱や電力に関わる機器をネットワークでつないで、それらをトータルに見える化するほか、熱と電力の需要に応じて自動で最適な運用を行うことを可能とするサービスの提供を行うという。これは創エネにもつながり、エネルギーの見える化による診断、最適運用といったソリューションの連携が生み出されるもとになるという。
Y-EMSは現在リニューアル工事中のヤンマーミュージアムがリニューアルオープンする2019年10月に、併せて最初のシステムが導入される予定だが、そこでのノウハウなどを踏まえ、病院やホテル、工場などへの導入を目指していくとしており、「機器の提案というよりも、EMSによって生じた対価について顧客と取引することで収益をあげたい」としている。
なお、同社ではこうしたソリューション事業の取り組みを通じて、国内での展開のみで5年後をめどに現在の売上高10億円を100億円規模にまで拡大させたいとしており、SDGsへの関心の高まりと併せて、積極的にアピールを行っていくとしている。