「一週間ほどユーザーの設計作業における振る舞いを学習データとすることで、人工知能(AI)が95%の確立で、そのユーザーが次に行いたい動作を提示することが可能になった。これは設計業務における大きな変化になる」
7月10日~11日にかけて都内で開催されたSiemens Digital Industries Software(DISW、シーメンス)のユーザーカンファレンス「Realize LIVE Japan 2019」と併せて行われたメディア説明会で、シーメンスPLMソフトウェアの製品エンジニアリング・ソフトウェア担当,シニア・バイスプレジデントのボブ・ハブロック(Bob Haubrock)氏はそう強調した。
これは同社が2019年初頭より提供を開始したハイエンド3D設計システム「NX」の最新バージョン「NX 2019」にて搭載された機械学習(ML)を活用した新機能によって実現されたもの。アダプティブUIと同社が呼ぶUIは、ユーザーがこれまでの作業でどのような機能を使ったのかを自動的に学習し、ユーザーが必要とする操作コマンドだけを提示することを可能にする。「従来、NXとTeamcenter、そしてSimcenterをあわせると、合計で2万以上の操作コマンドの中から、自分が使うコマンドを選んで利用するというきわめて複雑な状況であった。しかし、ユーザーの多くは、2万ものコマンドを活用するわけではない。そこでAIを活用することで、ユーザーがどういった作業のときにどういったコマンドを選択しているのかを学習し、それをもとに、次に何をしたいかを自動的に予測することができるようになった」と同氏はその採用の経緯を説明する。
もう1つ、NX 2019ではAI機能を活用した特徴的な機能が搭載されている。「ジェネレーティブエンジニアリング」と呼ばれるもので、これを活用することで、コンピュータが任意に設定されたパラメータを基に最適化したデザインを自動で生成することを可能とするものだが、その範囲としては、単なるデザインとしてのみならず、メカトロニクス、エレクトロニクスなどの要素を含めた形での設計となる。
「将来の優秀な製品は、メカ、エレそしてソフトの要素がうまく組み合わさったものとなる。また、そこにはプリント基板設計や、SoCなども個別にカスタマイズされたものが用いられていくことも考えられる」(同)としており、大学や企業といったパートナーを含め、さらなる融合による進化の方向性を模索していくとする。
なお、同社ではこうしたAIの活用について、すべての同社のソフトウェアになんらかの形で導入していくとしている。例えばアダプティブUIについては、すでに対応済みのNXのほか、Teamcenterが2019年末までに、そしてMentor Graphics(メンター)の製品群については2020年のどこかのタイミングで対応をしていく予定としている。