国際的な半導体製造装置材料業界団体であるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials Internal)は、日本の韓国に対する半導体材料の輸出管理強化に関して日本ならびに韓国の両政府に対して懸念を表明し、会員企業に対し、今回の日本政府の管理方針変更によって影響を受けている企業があればSEMIへ連絡するように要請していることを明らかにした。
7月1日、経済産業省(経産省)は、フッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドの韓国への輸出管理強化を発表したほか、8月2日には、韓国を「ホワイト国」から除外する政令改正を閣議決定しており、これは7日に公布され、28日に施行される予定となっている。これが施工されると、前述の3種類の材料だけではなく、多数の製品の輸出および関連技術に対する個別の輸出許可が義務付けられることとなる。
経産省は、この取り組みは懲罰的なものではなく、輸出管理システムの適切な管理と大量破壊兵器(WMD)の開発に使用される可能性のある化学物質、材料および技術の効果的な追跡を確保するために必要であると主張しているが、それにもかかわらずSEMIでは、韓国と日本で活動しているSEMI会員企業、そして世界的なサプライチェーン全般に悪影響を及ぼすことが懸念されると指摘している。
著者が確認したところによれば、日本のフッ化水素サプライヤは7月4日以降、8月頭の本稿執筆時点まで、経産省の審査に時間がかかっていることもあり、韓国の半導体企業に向けてフッ化水素を輸出できない状態にあるという。
経産省の発表を受けて、SEMIはすぐに国際理事会に相談を行い、SEMI会員企業とSEMI Japan代表およびSEMI Korea代表で構成されるグローバルアドボカシー対応チームを結成、日韓両国で活動しているSEMI会員およびグローバルサプライチェーンのリスク評価を行ったほか、SEMIは日本と韓国の貿易管理当局に懸念を伝え、貿易紛争が深刻化した場合には半導体業界は新たな対策を講ずるとしている。
SEMIでは、経産省と日本政府が、日本のSEMI会員企業が韓国との貿易に対し支障を受けることなく、半導体企業への輸出許可の承認に関して最小限の影響しか受けないと信じたいとしているが、そのために、日韓のメンバーが事態の進展を監視し、業界と政府間の定期的な会議を促進し、業界の影響を特定しリスクを軽減するように尽力するとしている。また、紛争が激化した場合、SEMIは世界貿易の原則に従って行動を起こす用意ができているともしている。
SEMIは、世界中の政府が地域経済と産業の両方に利益をもたらす政策を策定する際にガイダンスを提供するために、2018年にそのグローバル貿易原則を発表したばかりである。これらの貿易原則は、自由で公正な貿易、公開された市場、サプライチェーンの成長、そして知的財産と国家安全保障の尊重という4つの貿易の柱に基づいているとSEMIは強調している。
SEMI社長兼CEOのAjit Manocha氏は「私達は、日韓の紛争が拡大すれば、SEMIメンバーの経営やグローバルなサプライチェーンに潜在的に悪影響を与える可能性があることを日韓両政府に知らせるとともに、互いに歩み寄って妥協点を見出すよう要請している。SEMIはグローバルなマイクロエレクトロニクスのサプライチェーンが強固で、損なわれないことを保証することにフォーカスしている」と話している。
なおSEMIでは、日本の輸出管理方針の変更により何らかの悪影響を受けている会員企業が居る場合は、SEMIの地域オフイス(日本の場合はSEMIジャパン)またはSEMI米国本部内のグローバルアドボカシー・パブリックポリシーマネージャーのJay Chittooran氏まで連絡してほしいと世界中の会員企業に向けてコメントしている。