富士通は7月30日、埼玉県越谷市と共同で高品質なメロンを効率良く栽培するノウハウの確立を目指し、IoTを活用したメロン水耕栽培の研究を本格的に開始すると発表した。今後、研究結果を踏まえ、両者は共同でIoTを活用したメロンの水耕栽培における効果的な栽培方法を確立し、同市をはじめとした、農家や関連企業に栽培ノウハウを提供することで、市内の農業振興を支援していく考えだ。
越谷市では高収益な農作物としてメロンに着目し、年に3回の収穫が可能な町田式水耕栽培装置を活用した試験栽培を2018年度から開始し、今後は栽培ノウハウを市内の農家へ展開することで、メロンを同市のいちごに続く農業振興の柱に育てていくことを目指している。
そこで同社は、シングルボードコンピュータ「ラズベリーパイ」を活用した独自のデータ収集システムにより、高品質なメロンを効率よく安定的に生産する水耕栽培方法の確立を目指し、越谷市との共同研究を本格的に開始する。
研究では、ラズベリーパイを用いて構成した同社独自のデータ収集システムにより、温度、湿度、照度、二酸化炭素(CO2)濃度などの栽培に関わる各種環境データをビニールハウス内に設置した小型で省電力なセンサで収集し、クラウド上に蓄積した上でメロンの栽培環境と収穫量や品質との関係を解析。両者は解析データをもとに、メロン水耕栽培へのIoT活用の有効性を検証する。
栽培環境データを収集し、ラズベリーパイ上に保管したデータをクラウド上で管理するため、多層防御によりセキュリティを強化し、具体的にはラズベリーパイ上で動作するソフトウェアの堅牢化や、セキュリティ証跡の一元管理、機器本体の物理的堅牢化のほか、トレンドマイクロの「Trend Micro IoT Security(TMIS)」を採用。
事前に許可されたアプリケーション以外の起動を抑止するほか、登録されたアプリケーションの改ざんを防止するホワイトリスト機能を活用することで多層防御し、サイバー攻撃によるシステムの停止、不正なプログラムが実行されるリスクを抑制するという。収集したデータや生育状況の写真は、遠隔からスマートフォンやタブレットなどで確認を可能としている。
期間は7月30日~2020年3月31日までを予定(期間は年度単位で、継続する際は都度更新)し、越谷市農業技術センターの試験温室B(100平方メートル)を利用。
役割として、越谷市は高品質なメロンの安定生産と収穫量の増加を目的に収集データから収支・経営モデル、水耕栽培のマニュアルを作成し、市内の農家や企業に情報提供を、富士通は水耕メロン栽培事業へのIoT活用の有効性を検証するため、栽培におけるデータ収集と解析、およびセキュリティを担保した装置などを設置、運用をそれぞれ担当する。