SKILL、エン・ジャパン、日本マイクロソフトは7月29日、HR分野におけるブロックチェーンの活用および実用化に向けて、コンソーシアムモデルのブロックチェーンの構築や共同検証をはじめとする連携を開始した。

コンソーシアムモデルのブロックチェーンは、特定の事業領域に関係する限定された数の企業のみが検証者(バリデーター)のノードとなってブロックチェーンを運用することで、コストの削減やスケーラビリティの課題を軽減することができるプラットフォーム。

今回のブロックチェーンでは、HR分野で取り扱われる情報領域にフォーカスし、職歴情報や学歴情報など人材に関するデータの証明情報を記録し、ユーザーがデータの所有権とその内容について自分自身で証明情報を確認できるチェーンを運用していく。

エン・ジャパンおよびSKILLが分散してノードを運営し、SKILLと日本マイクロソフトが共同研究で構成の検討や検証を行い、コンソーシアムチェーンに関するインフラ面およびビジネスサポートの実サービス化を行う。

また、日本マイクロソフトはAzureにおけるブロックチェーンの技術支援を提供し、3社は連携してコンソーシアムの運営におけるブロックチェーンの技術的な課題や運営課題の整備などを行う。

コンソーシアムの利用メリットとしては、ファイナリティまでのスピードが早い、検証者が誰であるか明確、トランザクションコストを下げることができるという点があるという。

今後は、最初のコンソーシアムチェーン活用計画として、SKILLから職歴情報の証明に関するサービスをリリース予定。また、エン・ジャパンは人材の採用、教育、評価事業とブロックチェーンを連携させることで、さらなる「入社後活躍」の実現に寄与できる事業の検討を進めていくという。そして、日本マイクロソフトは、パブリッククラウドサービス Microsoft Azure をベースとしたブロックチェーン技術の社会実装拡大に向け、引き続きHR分野を含む各事業領域におけるコンソーシアムチェーン運営の技術支援を行っていく。

日本マイクロソフトのブロックチェーンに対する取組

また同日、日本マイクロソフトは、ブロックチェーンに対する取り組みを説明した。

本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 Azureアプリケーション開発技術営業本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナル 廣瀬一海氏

日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 Azureアプリケーション開発技術営業本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナル 廣瀬一海氏はブロックチェーンについて、「100越える技術があるが、電子署名、分散、データ共有、台帳の4つのテクノロジーをもっているものを業界的にはブロックチェーンと呼んでおり、ブロックチェーンは複数の企業や個人の間で真正性のある共有場所を設ける技術」と説明した。

  • ブロックチェーンとは

電子署名では、公開鍵と秘密鍵を用いて不正を防ぐこと、分散はデータベースの複製をネットワークの他のシステムに作成し、データ喪失消失を防ぐこと、データ共有は参加する組織や企業間でデータを共有すること、台帳はブロックチェーンに書き込まれたデータは、その後更新、改変ができず、読み取りのみができることだという。

  • ブロックチェーンとは

ブロックチェーンのユースケースとしては、ID、通貨、ポイント、バウチャー購入履歴 、地域下層通過・ポイント、ハンコ、契約書、シェアリングサービス、サプライチェーン、プロセス、取引の自動化、登記、遺言、出生、婚姻、転居、コンテンツ権利、賃貸借、投票権利、医療記録、診療録、処方箋、鉄道の遅延証明書、製造記録、流通過程、真正性認証、貴金属の証明などがあり、ブロックチェーンの展開としては、1社で利用するプライベートブロックチェーン、だれでも参加できるパブリックブロックチェーン、コンソーシアムで利用するコンソーシアムブロックチェーン(上述)があるという。

  • ブロックチェーンのユースケース

日本マイクロソフトでは、2015年からブロックチェーンに対する取り組みを開始。今年の5月には、台帳サービスであるAzure Blockchain Serviceを提供。

  • Azure Blockchain Service

また、既存システムとの連携開発キット「Azure Blockchain SDK」、クラウド内でのブロックチェーン アプリの容易なプロトタイプ作成をサポートする「Azure Blockchain Workbench」などを提供する

  • 「Azure Blockchain SDK」

  • 「Azure Blockchain Workbench」

事例としては、GEにおける飛行機部品のトラッキング、国連での難民の情報を管理(ID管理)、スターバックスでのコ-ヒー豆のトレーサビリティがあり、国内では、焼津市におけるブロックチェーンに対応した電子地域通貨システムの実証実験や喜多方市での電子バウチャー販売サービス導入による相互送客の有効性を検証を行っている。

  • 国連での難民の情報を管理

廣瀬氏は、これまではブロックチェーンを何に利用するかというユースケースを中心に検討されたきたが、より実践的なPoCもスタートしており、この1年、2年で本格導入が増えていくとの認識を示した。