ゲイトとKDDI総合研究所は7月22日、ICTの活用による漁業の効率化を目指したスマート漁業の実現に向けて、共同で検討・実証実験に取り組むことになったと発表した。2019年4月から、三重県尾鷲市須賀利町のゲイト漁場(定置網)において、スマートブイによる水温データ測定やカメラブイによる水中撮影などの実験を開始している。
KDDI総合研究所は、センサや通信機能を搭載したスマートブイを用いて、センサデータや気象データから漁獲量の予測を実現し、従来は漁師の勘や経験に頼っていた漁業の効率化を目指したスマート漁業の研究に取り組んでいる。
2016年から宮城県東松島市の同県石巻湾漁場で実証実験を開始するとともに、2018年には従来のスマートブイと比較して大きく軽量化・省電力化したという新型スマートブイを開発し、同漁場で新型スマートブイを用いた実験を進めてきたという。
なお、同研究の一部は、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)の「局所的海洋データを活用した漁業の効率化の研究開発」の一環として進めている。
ゲイトは、東京都内で居酒屋「かざくら」「くろきん」など9店舗を展開しているが、高齢化・後継者不足が進む漁業の現状に危機感を持ち、生産地を活性化したいとの思いから、自ら漁業に取り組み、2018年から三重県尾鷲市須賀利町で定置網漁を開始した。
また、2019年5月からは同県熊野市甫母町でも現地漁協の組合員となり、休漁していた超小型定置網漁の操業を開始し、自社加工、自社物流と組み合わせた垂直統合の新しい流通モデルを構築。
KDDI総合研究所におけるこれまでの取り組みに関しては、漁獲量予測実現に向けたデータの拡充や分析精度の向上、応用範囲の拡大などのため、実証実験場所を増やすことが1つの課題となっていたという。
このような中で、漁業を効率化・活性化したいというゲイトとKDDI総合研究所が目指す方向性が一致し、共同での実証実験に合意した。
KDDI総合研究所は、スマートブイをはじめとする実験機材の提供やデータ分析などを行い、ゲイトは漁場でのスマートブイ設置やメンテナンス作業、漁獲量データの提供し、共同で実験を進める。
すでに実験を開始している尾鷲市須賀利町に加えて、熊野市甫母町のゲイト漁場にでも実験を行う。今後、同実証実験を通して漁獲量予測による漁業の効率化を図ると共に、スマートブイに搭載した加速度センサを利用した波高推定実験など、漁業作業の安全性向上に寄与する検討・検証なども進めていく予定だ。