IDC Japanは7月22日国内でIoT事業を推進するベンダー/企業の「データエコシステム」に対する取り組み状況の調査結果を発表した。これによると、全世界のIoT機器の普及台数は2025年に416億台に達し、IoT機器が年間に生成するIoTデータの総量も同年に79.4兆GBに達するという。
高い成長が見込まれる市場に対し、多様なベンダーがIoTプラットフォームを基軸としてソリューションの提供を開始しているが、昨今ではIoTで共通的に使われる汎用機能の多くは多様なIoTプラットフォーム上に標準的に実装されつつあり、IoTプラットフォームの機能のみでソリューションの差別化を行うことは難しくなってきているという。
ベンダーの多くは新たな差別化要素を模索すべく「用途/シナリオ特化型IoTソリューション」と「共創を支える人材/組織変革」の2つの領域における取り組みを強化している。しかし、そうした新たな差別化戦略により企業のIoTの活用が広がったとしても、そこで活用されるデータが企業の特定部門にサイロ化されていては、大きなビジネス価値を生み出すのは困難だと指摘。
IoTの生み出す価値を最大化する上では、企業内部のデータに対して企業外部のデータを可能な限り組み合わせて活用する「データエコシステム」を形成していくことが必須だという。
同社は、企業がIoTプラットフォームを通じて収集するIoTデータや、基幹系システムなどに蓄積しているデータなど、企業内部における多様な1stパーティデータを、外部の2ndパーティ/3rdパーティデータと掛け合わせ、新たなビジネスモデル/収益モデルを創出すべく形成するステークホルダーの集合体を、データエコシステムと定義している。
データエコシステムを構成する要素の中で、企業が外部データの活用を推進するためのソリューション/活動として「データ取引基盤」「データ流通推進活動」「Data as a Service」の3つが広がりつつあるという。
こうしたソリューションや活動が拡大する中、短期/中期的にはIoTデータをオンライン/オフラインマーケティングのデータとともに取引/流通することで、企業がCX(Customer Experience)を向上させる事例が急速に増加し、データエコシステム市場の成長を牽引していくと想定している。
また、企業のIoTを活用したビジネス競争がレッドオーシャン化(競争激化)する一方で、外部データを活用して新市場を創造するデータエコシステムの世界には、ブルーオーシャン(競合相手がない状態)が広がっている。
ビジネス競争の土俵がブルーオーシャンにシフトしつつあることを各企業が認識し、マインドセットを切り替えることが、データエコシステム市場のさらなる成長に向け必須になるという。
同社のコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストである鳥巣悠太氏は「ベンダーは用途/シナリオ特化型IoTソリューションの提供や、企業との共創活動を、データエコシステム形成を前提として進めるべき」としており、また「ベンダーはIoTに取り組む企業の経営層のビジョンやマインドセットを見極め、啓蒙活動やコンサルティングを通じ、データエコシステムの世界に引き上げる努力を進めるべきである」と述べている。