日立製作所は7月22日、さまざまなプラントのモーター関連設備において、電流データをもとにAIを活用して異常発生の自動検知を行う予兆診断ソリューションを10月から提供を開始すると発表した。新ソリューションは、現場機器に直接センサを設置する必要がなく制御盤に搭載されている、もしくは制御盤内に新たに設置する電流センサからのセンシングデータをもとに診断が可能となり、ソリューション導入時の初期コストを抑えるとともに、遠隔による設備の予兆診断により保守コストの低減と設備の安定稼働を実現するという。

同社は、2018年に工作機械のモーターをセンサとして活用した消耗品の劣化検知技術を開発。今回、同技術を発展させ、モーターメーカーとしてのOT(Operational Tecnology:制御・運用技術)の知見と、同社のAIによる解析技術を取り入れることで、電流センサによるセンシングデータをもとにモーター関連設備の異常発生を自動検知する予兆診断技術を開発した。

  • 新ソリューションの概要

    新ソリューションの概要

モーター関連設備が劣化すると、モーターにかかる負荷が変わるためモーター電流の挙動が変化し、この微小なモーター電流挙動の変化から対象機器の劣化状態を表す特徴量を抽出することで、AIの一種である独自開発の機械学習により、与えられたデータからモーターの異常を見つけ出すことで、高精度な故障予兆診断を行うことができるという。

従来は過酷な現場環境にあるモーター関連設備を熟練保守員が巡回し、点検・診断作業を行っていたが、新ソリューションは個々のモーター関連設備に振動・温度センサーを設置することなく、電気室にある制御盤内に設置された電流センサによるセンシングデータをもとに遠隔で分析を行うことから、ソリューション導入時の初期コストを抑えつつ、安全な環境で作業を可能としている。

また、多数のモーター関連設備の個々のデータを取得し、集約して点検・診断することが可能となるため、対象設備が多い場合でも効率的な保守が行えることに加え、多数の設備の劣化状態を把握することができ、必要と判断したものだけのメンテナンスを行うCBM(Condition Based Maintenance)が可能としている。これらにより、保守作業の省人化、省力化が図れ、保守コスト低減とモーター関連設備の安定稼働を実現するという。

さらに、モーター関連設備の点検・診断は熟練保守員の経験・ノウハウに依存している一方、労働生産人口の減少に伴い、熟練保守員が不足しているという課題があるため、新ソリューションの適用により、従来の熟練保守員の経験に頼った診断から、システム化による診断基準の統一化が図れるため、人による判断のばらつきを抑え、熟練保守員不足の課題解消に貢献するとしている。

今後、同社は新ソリューションをLumadaの次世代メンテナンスソリューションとして、まずは鉄鋼制御システムの日立グループ製モーター向けに拡販するとともに、順次適用分野を拡大し、プラントの安定操業に貢献するという。