南米チリにあるアルマ望遠鏡を使って約5500光年離れた巨大原始星を観測し、この原始星を高解像度で捉えることに成功した、と山口大学の研究グループがこのほど発表した。原始星は生まれたばかりの赤ちゃん星。巨大な原始星は、一般的な原始星よりはるか遠い宇宙にあるため、これまで詳しい姿は分からなかった。今回、巨大原始星を取り巻くガスの姿を初めて真上から鮮明に捉えることができ、こうした原始星の進化の過程を明らかにする手掛かりになるという。
研究グループは山口大学大学院の創成科学研究科の元木業人(もとぎ・かずひと)助教を中心に国立天文台や九州大学、茨城大学、鹿児島大学の研究者らも参加した。
研究グループによると、質量の大きい星も小さい星も宇宙に漂うガスやちりが重力で集まってつくられるが、その過程は徐々に明らかになっている。しかし、大質量の星は数が少なく太陽系の近くにはないことや進化のスピードが速いことなどから、その誕生と成長については多くの謎が残っている。原始星についても、特に質量が巨大なものは、どのように周囲のガスやちりを取り込んで成長していくかよく分かっていなかった。
元木助教らは、さそり座の方向にあり、約5500光年離れた巨大原始星「G353.273+0.641」をアルマ望遠鏡で観察した。この巨大原始星は太陽の約10倍の質量があり、取り巻く円盤状のガスをほぼ真上から見ることができる。
元木助教らの研究グループが高い解像度を持つアルマ望遠鏡で観測した結果、この巨大原始星を取り巻く円盤は半径250天文単位(1天文単位は約1億5000万キロメートル)も広がっていることや、円盤よりも外側から円盤に向かってガスが落下してきていること、さらに円盤が非対称な構造を持ち、成長過程にあることなどが分かった。今回の観測で捉えられた円盤の質量は、太陽の約2~7倍とみられるという。
今回の観測結果から研究グループは、これまでによく観測されている質量が小さい原始星も巨大原始星も、その周囲の性質はよく似ており、その成長過程も類似していることがはっきりした、としている。
アルマ望遠鏡の正式名称は「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」で、2011年に観測を開始した高い解像度を誇る電波望遠鏡。日本と米国、欧州などが国際協力でチリ北部にあるアタカマ砂漠の標高約5000メートルの高地に建設した。直径約12メートルのパラボラアンテナ66台をつないで1つの巨大な望遠鏡のように運用する。日本は国立天文台が運用を担っている。
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