データサイエンティスト協会は7月12日、一般消費者1643名を対象に実施し、「匿名加工情報利用」に関する意識調査の結果を発表した。
データサイエンティスト協会は2013年に、データサイエンティストの育成のため、スキル要件の定義・標準化を推進し、社会に対する啓発活動を行うため、立ち上げられた。
ブレインパッドの代表取締役会長で、同協会の代表理事を務める草野隆史氏は「ビッグデータに注目が集まり、データサイエンティストへの需要が高まる一方、その定義がなかった。それゆえ、企業がデータサイエンティストを採用する際に齟齬が生じることがあり、そうした状況を解決したかった」と語った。
同協会では、データサイエンティストに求められる力を「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」の3つの領域に分けて整理し、データサイエンティストを4つのレベルに分類している。同協会が作成したスキルチェックリストはIPAのITスキル標準に採用されている。
調査結果については、コミュニティ・ハブ委員会 委員長を務める中林紀彦氏が紹介した。同氏は、SOMPOホールディングスのデータ戦略統括 / チーフ・データサイエンティストでもある。
そもそも、匿名加工情報とは、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、その個人情報を復元できないようにした情報のことをいう。2017年5月30日に施行された改正個人情報保護法において、パーソナルデータの活用を促すため、匿名加工情報については、本人の同意を得ることなく第三者提供を可能と定められている。
中林氏は「適切な加工」「安全管理措置」「公表義務」「識別行為の禁止」を実施すれば、個人情報が使えると説明した。
匿名加工情報の用途としては、クレジットカードの購買履歴、鉄道の乗り降り履歴、カーナビゲーションの移動履歴、電力の利用履歴をマーケティングや商品開発に利用することが想定されている。
しかし、2013年の交通系ICカードのデータ流通問題以降、企業ではレピュテーション・リスクを回避する動きのほうが大きく、データの自由な流通・利活用がほとんど進んでいない。こうした中、「消費者が個人情報活用に抱く『気持ち悪さ』を客観的に知りたい」「公共の目的であれば、個人情報の活用は許容されるのか」ということを明らかにするため、同調査が行われた。
調査の結果、「匿名加工情報」について「内容まで知っていた」という回答は3.8%、「内容までは知らなかったが、名称は知っていたという回答は12.2%となり、「匿名加工情報」の認知度は15.9%にとどまった。
匿名加工情報を利用することへの賛否について質問したところ、「どちらでもない・わからない」が過半数を占めるたが、これは匿名加工情報を知らない人が大半を占めるため賛否を問われても判断できない状況にあると、同協会は見ている。
公共の研究を目的とした匿名加工情報利用の賛否を聞いたところ、「自然災害時の活用」については、「自分の情報が利用されることに賛成である」と回答した人が 43.8%に上った。
ただし、「自然災害時の活用」であっても「一般論としては賛成だが、自分の情報の利用には反対である」という回答が4割程度を占めており、公共の研究を目的とした場合でも、反対者に対する配慮が必要だと思われるという。
さらに、自然災害時のデータ活用において匿名加工情報はどこまでの範囲が許容されるのかについて、属性ごとに回答してもらったところ、「性別」「年齢」「居住地(都道府県)」は約9割の回答者が利用されることを許容していることがわかった。
この結果について、中林氏は「所属団体・企業名、職種、役職、年収幅といった情報は、消費者が情報活用について『気持ち悪い』と感じるゾーンであることがわかった」と話した。
こうした結果を踏まえ、同協会としては「匿名加工情報について一般消費者の理解を得ることは重要であり、来年度の個人情報保護法改正に合わせた認知度向上と理解の促進に官民共同で取り組むべき」と提言している。
さらに、中林氏は「データ活用に賛同した人へのインセンティブとして、税制を優遇するような制度についても進言していきたい」と語っていた。