大日本印刷(DNP)は7月10日、エー・アンド・ユー、新建築社と共同で、雑誌の原稿となる画像とテキストを入力すると、その内容や雑誌の持つブランドイメージに合った誌面レイアウトをAI(人工知能)を活用して自動生成する技術を開発したと発表した。新技術は雑誌「a+u」8月号のレイアウト制作の一部に使用した。

雑誌の編集作業では、固有の「雑誌らしさ」を出していくため、各雑誌のデザインポリシーやブランドイメージに合致したレイアウトにすることが重要となり、制作ノウハウや暗黙知を複数の編集者で共有して継承していく必要があるほか、伝統の維持に加え、今までにない新たな誌面の追求も重要になっているという。

こうした要望に対してDNPは、画像処理や自然言語処理、データ解析などの技術と、最新のAIを掛け合わせて活用することで、雑誌らしさに合致した複数のレイアウトを自動で生成し、提示できる技術を開発した。

  • レイアウトパターン1

    レイアウトパターン1

  • レイアウトパターン2

    レイアウトパターン2

主な特徴として「雑誌の特徴に合ったレイアウトの自動生成」「自由度の高いレイアウトへの対応」「雑誌のデザインイメージのAIによる数値化」の3点を挙げている。

レイアウトの自動生成に関して、同社はa+uの過去15年分の誌面データをAIに学習させることで、雑誌らしさをスコア化するモデルを開発。このモデルを活用してテキストと画像のデータを入力すると、雑誌のブランドイメージに合った誌面レイアウトを自動的に提示する。

提示したレイアウトを参考に、編集者、カメラマン、ライターなどが活発な議論を行うことで、より新しいアイデアを引き出し、誌面の質の向上につながるといった効果が期待できるという。また、同技術により、編集者が毎回レイアウトを一から検討して制作する必要がなくなり、業務効率の改善につながるとしている。

自由度の高いレイアウトへの対応については、同技術は写真の配置や文字組などが非定型で自由度の高いレイアウトにも対応でき、あらかじめ定めたテンプレートに画像や文章を流し込む自動組版技術とは異なり、高度な誌面が重視される雑誌用に多様なレイアウトを生成できるという。

雑誌のデザインイメージの数値化に関しては、蓄積した雑誌レイアウトのデータから、その雑誌らしさを評価スコア化するとともに、AIがどの部分に着目したかを色で表示する「ヒートマップ」として提示する。これを客観的指標として活用することで、制作者間のコミュニケーションを促し、雑誌らしさの共有が図れるという。

  • AIが着目した部分を赤く表示したレイアウト評価画面

    AIが着目した部分を赤く表示したレイアウト評価画面

  • AIによるやや低評価のレイアウト評価画面

    AIによるやや低評価のレイアウト評価画面

今後、3社は同技術をa+uの編集に本格的に利用する中で、誌面レイアウト自動生成システムの実用化を目指し、DNPは雑誌・書籍に加え、パンフレットやカタログ、広告などへの利用も想定する、AIを活用した出版・編集支援サービスの構築を目指す。