IDC Japanは7月9日、国内エンタープライズストレージシステム市場のシステムタイプ別予測を発表した。今回のシステムタイプ別予測の対象となったエンタープライズストレージシステムのこれによると、同市場の2018年における国内市場の支出額は前年比4.2%増の1808億6100万円となった。

  • 国内エンタープライズストレージシステム市場 システムタイプ別支出額予測 2018年~2023年

    国内エンタープライズストレージシステム市場 システムタイプ別支出額予測 2018年~2023年

同社ではシステムタイプを「SoR(Systems of Record)」「SoE(Systems of Engagement)」「SoI(Systems of Insight)」「システム基盤プラットフォーム」「機器/装置制御システム」の5つに分類しており、5つのセグメントのうち「SoR」と「SoE」および「SoI」を合算した「SoE/SoI」および「システム基盤プラットフォーム」と「機器/装置制御システム」を合算した「Other」の3つのカテゴリーについて、エンタープライズストレージシステム市場の予測値を提供。

また、今回発表した国内エンタープライズストレージシステムのシステムタイプ別市場は、サーバ内蔵型ストレージなどサーバとの間でダブルカウントが発生するストレージを除いた、外付型エンタープライズストレージシステムとODM DirectのStorage Expansion(増設装置)を対象としている。

SoRが前年比1.6%減の869億8500万円、SoE/SoIが同13.9%増の270億2900万円、Otherが同8.9%増の668億4800万円となり、今回の予測対象となった市場全体の支出額は2023年で1779億1900万円と予測し、2018年~2023年の5年間における年間平均成長率(CAGR:Compound Average Growth Rate)はマイナス0.3%と予測。

システムタイプ別の2023年の規模は、SoRが891億4700万円でCAGRは0.5%、SoE/SoIが314億8100万円で同31%、Otherが572億9100万円でマイナス3.0%となり、SoE/SoIについては比較的高い成長を続け、市場全体を下支えすると推測している。

SoRは主にビジネストランザクションの記録に関わるシステム、SoEは顧客エンゲージメントを強化するためのシステム、SoIはデータの分析を通してインサイトを得るためのシステム。国内エンタープライズストレージシステム市場では、SoRに比べて、SoE/SoIのクラウド化(パブリッククラウド、プライベートクラウド)が進む見込みだという。

これは、SoE/SoIではクラウドが持つ俊敏性、柔軟性、拡張性などの特徴がより強く求められるためであり、同社では2023年における国内エンタープライズストレージシステムのクラウド比率は、SoR向けでは22.4%に留まるものの、SoE/SoI向けでは41.4%に達すると想定している。

特にSoE向けでは、俊敏性、柔軟性、拡張性に対する要求が高く、市場では外付型エンタープライズストレージシステムとx86サーバをベースとしたSoftware-Defined Storage(SDS)との競合が激しくなると予測。また、SoI向けではアナリティクス処理を支援するため高パフォーマンス、低レイテンシ、広帯域といった特徴を持ったストレージインフラ(NVMe over FabricなどのNVMe技術を採用したオールフラッシュアレイなど)に対するニーズが高まるという。

同社のエンタープライズインフラストラクチャ グループディレクターである森山正秋氏は「予測期間を通しSDSが国内外付型エンタープライズストレージシステムに与える影響は大きくなる。外付型エンタープライズストレージシステムにとっては成長機会が高いプライベートクラウドの分野でSDSと差別化し、ビジネス機会を獲得し続ける製品戦略と販売戦略が求められている」と分析している。