ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンは7月5日、同社が6月4日(米国時間)にリリースした、マルチフィジックス解析ソフトウェア「ANSYS」の最新バージョンとなる「ANSYS 2019 R2」にて、2018年に買収したOPTISの光学シミュレーション「SPEOS」が「ANSYS SPEOS」として統合されたことを踏まえ、現在の同社における自動車分野の取り組みについての説明会を開催した。
ANSYS SPEOSの最大の特徴は、従来版のSPEOSでは、別途3D CADを用意する必要があったものが、ANSYSの提供するCADとカーネルの統合を遂げたことで、CADを用意する必要がなくなったという点。これにより、3次元ダイレクトモデラーである「SpaceClaim」の中にリアルタイムレイトレーシングを融合し、さまざまな解析と同じように、モデルを変更した際の光の反射具合などをリアルタイムで確認することができるようになった。
アンシス・ジャパンのエンタープライズアカウント事業部ディレクター 兼 オプティス・ジャパン 代表取締役社長を務める芳村貴正氏は、「これまでもSPEOSは自動車のヘッドランプやテールランプの光がどのように照射されるのか、といった分野で使われてきたが、マルチフィジクスでの解析が可能になったことで、光学だけでなく、熱流体やランプ内の曇りなどを含めて、総合的にさまざまな角度からの評価が可能になる」と説明。また、別途CADを入手する必要がなくなったことから、例えば印刷業界のような、CADまで使う必要はないけど、照明と印刷物の相性がどうなっているのかを知りたいというニーズなどにも対応しやすくなり、さらに応用範囲の拡大が期待できるようになるとしている。
そんな同社がOPTIS時代より機能強化を進めてきているのが自律走行車シミュレータ「ANSYS VRXPERIENCE(VRX)」で、自動運転の実現の際に求められる快適な居住空間をクルマの中で実現するiCABINの時代に向けた照明、音、空間のベストバランスをシミュレーション上で探索することを目指している。「重要な要素となる光学解析だが、ソフトウェアとして太陽光をはじめとするさまざまな光源、光を反射/透過する各種素材の特性、環境光による見栄えの変化、人の年齢の差による見え方の変化などに起因するさまざまなパラメータを数値化して表示できる。CGは確かに見た目は良いが、それが実際の製品とはイコールにならない。だからこそ、光学解析を用いた光に関する課題解決を行っていく必要がある」と同氏は、クルマづくりにおける光学解析の重要性が今後、さらに高まっていくことを強調。すでに海外ではバーチャルコックピットとして、さまざまなシーンにおいて、ガラスなどへの映りこみなども含めた車内の明るさの変化などを調べるのに、さまざまなソリューションとして活用されているとする。
実際、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いて、原寸大のVRで構成されたコックピットでの見栄えの評価や、3Dドライビングシミュレータを活用したインテリジェントなヘッドランプの動作確認、複数人で3Dで表現されたクルマのインテリアを評価するソリューションといったものを日本でも提供しており、今後も同社としても、すべてのユーザーに使いやすい光学解析技術の提供を目指し、機能強化・拡張を図っていくとしており、日本の自動車産業の競争力強化につながれば、としている。