日本半導体製造装置協会(SEAJ)は、2019年7月時点での半導体製造装置3か年需要予測(2019年から2021年まで3年間)を発表した。
それによると、2019年度の日本製半導体製造装置市場は、データセンター向け投資の減速や米中摩擦による世界景気の悪化の影響でメモリメーカーの投資抑制により需要低迷が影響し、前年比11.0%減の2兆2億円と予測されており、2019年1月に発表した前回予想の同1%増の2兆2810億円から、大幅なマイナス成長予測へと引き下げられたことになる。1月の予測発表の際にも、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が世界の半導体製造装置市場をマイナス成長と予測する中、日本製装置だけプラス成長するこの予測には一部から疑問の声が上がっていたが、それが今回の予測で見直されたことになる。
日本市場も前年比19%減へと下方修正
また2019年度の日本市場については、メモリメーカーの投資が減速した影響から同19.2%減の7984億円という予測となっており、1月時点での予測(同横ばいの9748億円)から大幅な下方修正となってしまった。
2020年度については、グローバルでのメモリ投資の復調、ロジックならびにファウンドリの投資が堅調になされるとの見込みから、同10.4%増の2兆2079億円、2021年度も同7.4%増の2兆3712億円とSEAJは予測しているほか、日本市場についても、2020年度のメモリ投資復活とイメージセンサへの継続した投資が期待され、同17.6%増の9385億円、2021年度も同7.4%増の1兆80億円としている。
SEAJは「IMF(国際通貨基金)の4月発表によると、2019年の世界の経済成長率は、2018年後半の減速により1月発表時点から0.2ポイント下方修正され、3.3%増と予想されている。この時点では2019年後半の回復が予測されているが、米中貿易摩擦のさらなる激化、英国のEU離脱問題、金融市場の不安定など下振れリスクが高まっている。2020年は3.6%増に回復し、2021年も引き続き3.6%増と成長を続ける見通しである」と、世界的な不安定な経済状況が背景にあると説明している。
半導体消費を牽引するアプリケーションについては、「従来からのPCやスマートフォン需要に加えて、ここ数年はサーバやSSDなどのデータセンター関連が大きく上乗せされてきた。現在はデータセンター需要が一時的に低迷しているが、中期的な視点では、5G通信やIoT、自動運転やAIの技術革新などにより、未来に向かって半導体の消費は重層的な拡大が期待できる」としている。
また、半導体市場や設備投資については、「WSTS(世界半導体市場統計)によると、2018年の半導体市場成長率は、年終盤に高騰していたメモリ価格が下落し始めたことにより、2018年秋季の予測である同15.9%増を下回る 同13.7%増で着地した。メモリ価格の下落は2019年に入ってさらに拡大し、2019年春季予測では、2019年の半導体市場成長率は同12.1%減とされ、2018年秋季予測の同3.8%増から下方修正がなされた。設備投資については、2019年もロジックメーカーやファウンドリの投資は堅調だが、メモリメーカーがDRAM、3D NANDともに投資を削減しているため、SEAJの集計では一桁台後半のマイナス成長となる見込みである」と述べている。
日本製FPD製造装置市場は伸び悩み
一方のFPD製造装置の需要予測だが、2019年度は、中国のG10.5基板LCD投資は予定通りに進められるものの、G6基板OLED投資のタイミングが需要面で谷間にあたるため、前年比1.2%減の5300億円と予測されている。ちなみに今回から、FPD販売額の統計に新たな参加企業があったことから、その分が上乗せされた結果となっている。そのため、従来の統計参加企業だけで集計した場合は同16.1%減の4500憶円となり、2019年1月時点の同16.7%減という予測とほぼ同じとなる。2020年度は同2.0%増の5406億円。2021年度は延期されていた韓国のOLED投資が復活するとの見方から同3.0%増の5,568億円と予測されている。
予測の背景についてSEAJは、「2017年4~6月期の平均10%をピークに、韓国・台湾・日本の大手パネルメーカーの営業利益率は低下傾向が続いており、2019年1~3月期は韓国の大手2社も営業赤字を記録した。中小型OLEDパネルは、現在、中国が中心となって新工場への投資が行われているが、すでに必要とされる生産能力としては、韓国勢が生産するだけで相当部分の供給が可能な状況となっている。また、大型パネルについてもG10.5基板のLCD投資は中国に集中しており、2018年度もこの2つの市場の投資の78%が中国向けであった。もし、計画されている中国のG10.5 LCDの投資がすべて実行されれば、膨大な枚数のパネルが生産されることとなり、他国での既存ラインの停止や、新技術向けラインへの転用といった動きも出てくる。そのため、2020年までの投資計画については、生産能力の拡大が中心であるが、2021年以降は、既存ディスプレイとの差別化を図ろうという動きがでてくると思われる」としており、今後はパネルメーカー各社の事業方針次第で、需要の変動が大きくなるとの見方を示す一方、技術的な差別化が進むことで、装置メーカーには新たな事業の創出機会が訪れることも期待できるともしている。