ヴァイナスは7月3日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が基礎開発を行ったCAE/CFD向け機械学習処理による固有直交分解(POD)/動的モード分解(DMD)システム「FBasis V1」を7月4日より国内の顧客向けに販売を開始すると発表した。

同システムは、JAXAが開発したFBasisをベースに、ヴァイナスが製造業の製品開発・設計部門が使い易いように機能拡張やユーザインタフェースなどを開発して商用化したもの。機械学習機能により、CFDで得られる大規模かつ複雑な流れから、製品の性能を左右する特徴的な構造を自動で抽出することが可能であり、解析の経験はノウハウなどの知見がない設計者でも、複雑な流れの本質を理解することを可能としている。

抽出プロセスは、大規模非定常データをPODにより空間的に特徴を持つ流れ構造(PODモード)に分解。その後、PODモードを用いてデータを低次元化。それを入力データとしてDMDを実施することで、時間的に変動(振動)する流れの特徴的構造(DMDモード)を分離、抽出する。さらに、DMDモードの中から、機械学習処理により、重要モードを自動選択し、大規模で複雑な非定常データから流れを支配する重要な特徴的構造を抽出。重要モードの分析を行い、独自開発の「FBasis-Plot」機能により、グラフ処理がなされ表示が行われるという手順となっている。

  • DMD

    JAXAが回収機能付加型HTV(HTV-R)で行った大気圏突入カプセル後流の流体構造解明の解析結果の一部。重要DMDモードの特徴的流体構造(St≒0.2の流体現象。主流方向速度成分の等値面表示)。主に3つの流体現象をあらわすモードが存在することが判明した (提供:ヴァイナス)

この自動的な重要モードの抽出により、ノウハウなどがなくても、容易に流れ場の特徴的構造の抽出や理解が可能なることから、従来よりも一歩進んだ高性能製品の開発が可能になると同社では説明する。

また、Incremental POD(逐次型手法POD)の採用により、省メモリ計算が可能なほか、計算アルゴリズムの工夫による高速演算処理にも対応。次世代バージョンでは、並列化を行うことで、さらに大規模モデルの高速計算にも対応する予定だという。

なお、ヴァイナスでは、自動車・重工業・機械メーカーなどを対象にするとしており、価格は年間ライセンスが96万円(税別、保守サービス込み)、永久ライセンス料金が220万円(税別、初年度保守料金込み。次年度以降の保守料金は年間36万円)としており、初年度50ライセンスの販売を目指すとしている。