NTTデータは7月2日、プレス向けにRPAの現状と今後の展望についてのセミナーを開催した。
この中で、NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 デジタルソリューション統括部 RPAソリューション担当 課長 中川拓也氏は、RPAが注目されている理由として、「社会的背景(労働生産性向上)」「即効性(自動化効果)」、「わかりやすさ(業務部門主導)」の3つを挙げ、「この3つの要件が揃ったのが大きい」と語った。
同社はRPAとしてWinActorを販売しており、ライセンスはこの3-4年で3000ライセンス以上販売したという。
さらに同氏は今後のRPAの成長を期待し、「RPAは今後オフィスで一人一台の時代になっていく」と、さらにオフィスに浸透していくとの見通しを示した。
また、RPA技術者検定試験が普及の起爆剤になっており、すでに合格者は1万人を越えているという。
同氏はWinActorの優位点として、マーケットプレイスがあり、さまざななツールを提供している点や、管理・統制ロボット「WinDirector」によってサーバ上でWinActorの稼動を一元管理でき、野良ロボットの監視でもできる点のほか、パソコンでもサーバでも動作可能な点を挙げた。
今後のRPAの展望について同氏は、これまでは単純作業の定型業務に利用されていたが、AIの活用により、高度な非定型業務にも浸透していくとした。
とくに進化しているのがAI-OCRの分野で、これまで難しかった自由記述欄や漢字・カタカナ・数字・アルファベットの混在の文章、印影の重なり、タブレットで撮影した歪んだ画像でも変換が可能になっているという。さらに、フリーフォームに対応し、異なったレイアウト帳票の中から、同じ項目を自動抽出できるようになり、自治体を中心に利用が拡大しているという。
そこで同社では、LGWANと同社のデータセンターを結び、自治体向けAI-OCR機能を閉域網で提供するサービスを10月から開始する予定で、8月から先行ユーザーによる試用を開始する。
そのほか、同社では新たな取り組みとして、NTTドコモと共同で、問い合わせの電話を担当者に転送するシステムを開発中で、これをRPAと組み合わせることで、Outlookのスケジュールと連動し、実際に取り次ぐかどうかを判断するという。
また、AIスピーカーによる音声を信号化し、その信号化によってRPAを自動実行する取り組みや、工場などで、手の動きをハンドセンサーで読み込むことで、裏でRPAの実行を自動化する取り組みも行っているという。
中川氏は、これまでRPAは金融や自治体で利用が多かったが、今後は、製造業や病院などヘルスケアでの普及が期待できると語った。
また、ロボット化を情報システム主導で行うのか、現場主導で行うのかについて同氏は現場主導で行い、情報システム部門がサポートするのがよいとした。
ヤマト運輸は財務資料作成を2日から2時間に短縮
当日は、ヤマトシステム開発 ITオペレーティングカンパニー 事業推進グループ マネージャー 杉原洋氏により、ヤマトグループにおけるRPAの活用事例が紹介された。
ヤマト運輸では、月次の財務資料を作成するにあたって、100以上のデータをExcelに転機する必要があり、これまでは2日間を要していたが、RPAにより、2時間に短縮したという。
また、支社においては、勤怠状況の会議資料を8時間かけて作成していたが、RPA化により3時間に短縮したほか、毎日作成することが可能になったという。
さらにヤマトグループでは、深夜帯など、人が稼動していない時間でのRPA活用を推進しており、ヤマトリースでは、中古車両の市場価格の算出にRPAを活用しており、これにより、これまでは情報利用できなかった午前中に営業マンが活用できるようになったという。
また、玩具製造業の分野では、これまで夜中のECでの注文は、午後からの発送になっていたが、RPAによる受注データの取得や変換作業を行うことで、午前中の発送が可能になったという。
杉原氏よれば、RPAの運用ではこれまで外部システムの仕様変更やインフラのパフォーマンス低下により、突然、RPAの動作が停止するというトラブルがあったが、ヤマトシステム開発のクラウド上でRAPを動作させ、24時間365日の監視・保守サポートを行いこれを解決。8月からがこれを一般企業にも外販する予定で、従量課金のサービスとして提供していくという。