最近「爆弾低気圧」という言葉をよく耳にする。中心気圧が急激に下がって勢力が台風並みになる低気圧のことで日本周辺でも発生している。その爆弾低気圧でも、まれにみるほど急発達して強い勢力を持つ場合、海外ではしばしば「スーパー爆弾低気圧」と呼ばれる。立正大学などの研究グループが、このスーパー爆弾低気圧ができる要因を世界で初めて解明した、と発表した。「多量な水蒸気の凝結」が鍵だという。研究グループは、天気予報の改善や温暖化に伴う爆弾低気圧の変化の理解向上に貢献できる、としている。研究成果は17日米国学術誌「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」に掲載された。

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    高解像度の数値シミュレーションで再現されたスーパー爆弾低気圧に伴う雲の三次元構造(左)と地上における降水と気圧の分布(右)。時刻は低気圧が最も急発達した時刻(協定世界時 2018年1月4日6時)(提供・立正大学など研究グループ)

研究グループは、立正大学地球環境科学部の平田英隆助教のほか、九州大学理学研究院の川村隆一教授、海洋研究開発機構(JAMSTEC)アプリケーションラボの野中正見主任研究員、名古屋大学宇宙地球環境研究所の坪木和久教授らで構成された。

研究の対象になったのは、2018年1月に米国の東方海上で発生して大きな被害をもたらしたスーパー爆弾低気圧。この低気圧は、18年1月4日に米国の東方海上で発生。従来の低気圧発達理論では説明がつかないほど急発達し、米東岸に暴風や大雪をもたらした結果、死者20人を超える人的被害と約11億ドルの経済的損失をもたらした。

平田助教らは、JAMSTECが運用するスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を活用。雲の細かい構造を再現できる数値モデルを用いて、海洋上で発達する低気圧の詳細な構造をシミュレーションして分析した。

その結果、低気圧が急激に発達した際に、低気圧の中心付近での降水が局所的に強まることが判明。この現象は、降水をもたらす水蒸気が多量に凝結したことを示し、凝結によって生じた熱(凝結熱)によって引き起こされた気圧の低下が、スーパー爆弾低気圧の発達を加速させたことが分かった、という。

また2018年1月のスーパー爆弾低気圧は、米東岸の沖合を流れる暖流のメキシコ湾流から熱と水蒸気が供給され、これが低気圧の中心付近の凝結熱の生成を促して極めて短期間に強い勢力に発達したことも明らかになったという。

爆弾低気圧は、急激に発達する温帯低気圧の慣例的な呼び方で正式な気象用語ではない。気象庁は、中心気圧が24時間に20ヘクトパスカルを超えて低下した場合「急速に発達する低気圧」としている。日本では「台風シーズン」ではない冬から春先にかけて発生するケースが多い。

日本の南岸を西から東に流れる黒潮が日本の爆弾低気圧を呼ぶ要因、とする研究成果をJAMSTECや北海道大学の研究グループが2017年1月に発表している。

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