Intelの日本法人であるインテルは6月20日、都内で記者説明会を開き、2019年第2四半期(4-6月)に取り組んできた主な活動を振り返り、現在、同社が注力するPCセントリックからデータセントリックへの移行により、何を狙っているのか、といったことの説明を行った。
近年、データ爆発という言葉にも表されるように、人間のさまざまな社会活動から生み出されるデータの量は日々増加の一途をたどっている。ある調査によれば、現在、世界に存在しているデータの総量の半分は過去2年間で生み出されたものであるという。また、そうした生み出された膨大なデータだが、実際にビジネス/オペレーションに活用されているのは2%ほどに過ぎない、という調査結果もあり、同社ではそうしたまだ活用されていないデータが今後、活用されていくようになると見ており、そこに自社の成長につながる潜在的需要があるとしている。
そうしたデータ活用社会を支えるのが、「データセンター」「ネットワーク」「IoT」といった分野で、Intelではこうした市場がデータセントリック時代のターゲットマーケットと認識。その市場総額は2200億ドル、成長率も年率平均で7%ほどと安定して成長していく市場と見ている。
これまで同社は、そうした市場のサーバ分野にXeonを中心としてソリューションを提供してきたが、2015年にはFPGAベンダのAlteraを買収したほか、近年ではOptane DC パーシステント・メモリ/SSDといったメモリソリューションも手がけるなど、ターゲットとする市場で必要となるすべてをソリューションとして提供できる体制を整えてきた。インテルの鈴木国正 代表取締役社長も「プロセス、アーキテクチャ、メモリ、インタコネクト、セキュリティ、ソフトウェアの6つの分野において革新を続けていくということが基本的な考え方」と説明。高速なデータ移動技術、より多くのデータ保存技術、あらゆるデータを処理する技術といった3つの方向性について、ソフトウェアとシステムレベルでそれらの最適化を図っていこうというのが今のIntelとする。
中でも、人工知能(AI)や次世代通信規格の5G、そして自動運転に代表されるオートノマス・システム(自律型システム)といったテクノロジーの進化は、世界的に注目を集めるメガトレンドであり、そうしたテクノロジーの発展をビジネスチャンスとして捉えていくためのポートフォリオの拡充は今後も継続していくという。
そうした対象市場の変化に対し、Intel上席副社長 兼 ネットワーク&カスタム・ロジック事業本部長のダン・マクナマラ(Daniel McNamara)氏は「こうしたデータセントリックな市場は、Intelが成長をしていくための非常に大きな機会をもたらすが、その市場でのシェアはまだまだ低く、これまでのPCセントリックで築き上げてきたマインドセットを破壊し、変貌を遂げる必要がある」と、事業体製の在り方について言及。実際、Intelは6月中旬に、これまでネットワークインフラを中心に担当してきたNetwork Products Group(NPG)と、FPGAを中心に担当してきたProgrammable Solution Group(PSG)を統合し、新部門「Network and Custom Logic Group(NCLG)」を立ち上げたことを明らかにしている。
マクナマラ氏はPSGの責任者で、NCLG発足に併せてNCLGの責任者となった。「2つの部門を統合したことで、スマートデバイスからクラウドまで、広範なポートフォリオをワンストップで提供できるようになる。しかも、ロジックのみならず、ネットワーク、メモリ、そしてそれらのハードウェア上で動くソフトウェアまで含めての提供であり、顧客は我々に話をもってくるだけで、ほかの部門などとやり取りする苦労をすることなく、ソリューションの構築についてのやり取りを進めていくことができるようになる」と同氏はNCLGの意義を説明するほか、2018年にストラクチャードASICベンダであるeASICを買収したことで、「FPGAではじめにソリューションを構築した後、さらなる低消費電力性が欲しかったり、数が出ることが見えてきて低コスト化を図りたかったりした場合に、スムーズにeASICソリューションへと移行するといったことも可能となった。こうした取り組みが、市場のさらなる拡大につながる」と、顧客のロジックデバイスに対するさまざまなニーズに柔軟に対応できる体制もすでに構築済みであることを強調した。
また、会見にはNECのシニアエグゼクティブである渡辺望氏も登壇。同社は6月5日付けで楽天モバイルと完全仮想化クラウドネイティブネットワークに対応した5GオープンvRAN(仮想化RAN)の構築を進めることを発表しているが、今回、その技術のベースはNECの無線技術とIntel FPGAによる柔軟性を組み合わせるものとなることを明らかにした。
渡辺氏は、「Intelのソリューションは技術が成熟してきた場合でも、eASICへと移行することで、将来的なコストダウンなどに対する道筋を描けるというのが強みであり、そうした将来に向けた技術についてもフルに活用していくことで、5Gに要求されるハイパフォーマンスと低コストの両立を図っていき、この実績をもとに、グローバルにも展開していくことを目指す」と、Intelのデータセントリック製品の活用によって得られるメリットを説明。それを受けて鈴木氏も「Intelとしても、そうした顧客のニーズに応えるべく、エンドツーエンドのソリューションを提供し、新たな市場機会の創出を今後も図っていくことで、パートナーの成長を支援していく」と、自社の役割を明言。国内でも積極的に、AIや5G市場での成長を目指す顧客のニーズを汲み取り、その実現を支援していくとしていた。