独Infineon Technologiesは2019年6月3日(独時間)、米Cypress Semiconductorを約90億ユーロで買収することでCypressと合意したと発表したが、英IHS Markitは、この買収を考慮した2018年の車載半導体企業売上高ランキングトップ10を発表するとともに、この買収によるInfineonのポートフォリオの充実についての分析を行った。
買収で車載半導体トップサプライヤとなるInfineon
2018年の車載半導体サプライヤランキングで2位に位置づけられるInfineonの車載分野における売上高は41億2000万ドルで、市場シェアは9.9%。一方の買収対象となったCypressの車載半導体の売上高は8憶800万ドルで市場シェアは1.9%で、2社合計の売上高は49憶3000万ドルで、市場シェアは単純計算で11.9%となり、トップシェアのNXP Semiconductorsの売上高45億ドル、シェア10.8%を上回ることとなる。
ちなみに、車載半導体サプライヤランキングトップ10には、日本勢として3位にルネサス エレクトロニクス、10位にロームが入っている。IHS Markitの車載半導体担当シニアプリンシパルアナリストであるPhil Amsrud氏は「InfineonのCypress買収により、Infineonの売り上げは現在のマーケットリーダーであるNXPを凌駕する。これにより、Infineonの市場シェアが拡大するだけでなく、Cypressの製品ポートフォリオは、現在Infineonが提供していない新しい分野の製品であり、これによりInfineonは、インフォテインメントおよび先進運転支援システム(ADAS)市場で優位な立場を確保することになる」と分析している。
Infineonの車載事業を拡大させるCypressのメモリ製品群
また同氏は、「Cypressの車載半導体メモリ製品群は、Infineonの車載半導体ポートフォリオの拡大に大いに貢献するだろう。現在、Infineonは、車載半導体メモリを扱っておらず、CypressのフラッシュメモリおよびSRAM製品群が加わることになるほか、CypressのNORフラッシュは、システムの安全性を強化する製品を提供するというInfineonの戦略と評判によく一致している」と述べている。
さらに「CypressはFRAM技術の開発も推進しており、その性能特性から自動車のインフォテインメントシステムに適しており、今後の成長が期待される」ともしている。ちなみにCypressは、2018年の自動車用メモリ市場で4位にランク付けされている。
補完的に拡充される車載マイコン
こうしたメモリ製品をポートフォリオに加えることは、InfineonのADAS関連ソリューション、そしてインフォテイメント分野の強化につながるとIHSでは見ている。
また、Cypressは、自動車にとって今後ますます主要な機能となるWi-FiおよびBluetoothの製品群も提供してきたほか、各種のパワーマネジメントIC(PMIC)も提供してきており、これらを加えることで、InfineonはADASおよびインフォテイメントアプリ向けチップ市場での順位を2018年の8位から4位へと躍進し、ルネサスを抜くこととなる(ちなみにCypressは同分野6位)。
加えてCypressは車載マイコンも有しており、これがInfineonの既存車載マイコン群に加わることとなれば、Infineonは車載マイコン分野3位の地位を強めることができるようになる。旧来からのInfineonの車載マイコンはエンジン制御やパワートレーン制御向けが中心で、一方のCypressはインスツルメントクラスタ向けを中心としたボディ制御向けが中心である。そのため、両社の車載マイコンはまったく異なる分野をカバーしているため、ポートフォリオを補完的に充実させることが可能になるとIHSでは見ている。
なお、Infineonは同買収を2019年末か2020年初めまでに完了させたいとしているが、それまでに米国や中国はじめ両社のビジネスが関与する各国の規制当局の許可を受ける必要がある。