日立製作所と日立ビルシステムは6月12日、昇降機の保全に関わるエンジニア向けに、VR(Virtual Reality)技術を活用した体感型の教育システム(VR教育システム)を開発し、国内で正式運用を開始した。今後、教育メニューの拡充と、グローバル展開を順次図るとともに、昇降機事業全体でのデジタル技術の活用を推進していく。
両社は、昇降機やビル設備の施工・保全などに携わる技術者の教育拠点として、国内の亀有総合センター(東京都足立区)、中華人民共和国内4カ所のトレーニングセンター、2017年にタイ王国に開設したアジアトレーニングセンターを有している。
各センターでは、昇降機に関する各種の作業教育や、現場で起こりうる危険を実際に体験させることで安全意識の向上を図る安全体感教育など、さまざまな教育を実施しているが、グローバルでの事業拡大とともに、受け入れ人数の増加や教育メニューの拡充による教育拠点の対応能力の飽和、物理的に各地から教育拠点に集合する非効率性などが課題となっていたことに加え、安全体感教育においては実体験できない労働災害を体感できる教育メニューが求められていたという。
このような背景のもと、日立は2018年1月以降、中国内でVR教育システムの運用を開始し、今回、国内向けのシステムを新たに開発し、2019年4月から正式運用を開始した。具体的には、昇降路内への転落などの労働災害を疑似的に体感できるコンテンツや、エレベーターの保全作業の基本動作である「かご上への乗降方法」、最重要作業の1つである「ブレーキ分解整備作業」について実機のない環境でも作業手順を学習できるコンテンツなどを開発。
開発したVR教育システムは、まずは亀有総合センターで運用を開始し、今後はコンテンツの拡充を図るとともに、多言語化によるアジアトレーニングセンターへの展開、VRツールの国内外拠点への配布による遠隔教育などを推進し、グローバルでエンジニア教育の高度化と高効率化、教育機会の拡大を実現するという。また、保全現場での作業支援や顧客への提案活動など、VR/AR技術の活用も検討していく。