Gaviワクチンアライアンス(Gavi(ガビ))、NEC、英Simprints Technology(Simprints(シムプリンツ))の3者は6月6日、開発途上国の予防接種率向上を目的とした生体認証の活用に関する覚書を締結した。

  • 覚書を締結した3者の代表。右からNEC 代表取締役 会長 遠藤信博氏、Gavi(ガビ)ワクチンアライアンス 理事長 ンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏、Simprints(シムプリンツ) CEO トビー・ノーマン氏

3者は開発途上国におけるワクチン普及を目的とした幼児(1~5歳)指紋認証の実用化を目指す。実現すれば世界初だという。

Gaviは、予防接種を推進し世界の子供たちの命を救い健康を守ることを目的として、2000年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で設立した世界同盟。

各国政府、国連世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、世界銀行、ワクチン業界、研究機関などが参画しており、活動の中心を開発途上国に据えて、設立から現在まで7億人の子供たちに予防接種を行い、1000万人の命を救ってきたという。

各国・地域では、出生登録や母子手帳の整備、ワクチンの運搬・保管体制の強化、ワクチンの重要性を周知する活動などを推進しているものの、依然として約2000万人の子供が標準的なワクチンさえ受けられていないといい、誰一人取り残さないワクチンの提供が求められている。

3者が締結した覚書は、開発途上国の幼児を対象に指紋認証で本人を特定することで、ワクチンの予防接種を推進する活動についてのもの。

幼児の指紋は、指先が柔らかいため変形しやすく画像が不鮮明になりやすいため、従来の抽出・照合エンジンでは認証が困難だったという。

今回Simprintsのスキャナで撮影した幼児の指紋画像を、幼児指紋用途に最適化したというNECの指紋認証エンジンで照合する技術検証を行ったところ、認証率99%の精度を達成したという。

  • 認証率99%の精度を達成

  • 指紋認証のシステム

指紋画像と氏名・年齢・性別などの情報を組み合わせることで、IDを持たない幼児でも指紋認証による本人確認が可能となり、ワクチンの公平な配布と接種記録の管理に貢献するとしている。

3者はこの活動を、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」で具体的な目標として掲げているワクチンのアクセスの提供(ターゲット3.8)と5歳以下死亡率の低減(ターゲット3.2)に貢献するものとして推進しているという。

3者は2020年前半にバングラデシュとタンザニアで幼児指紋認証の実証実験を行う予定で、今後もこの活動を拡大し、各国政府や国際機関・団体と連携してユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成を目指す。