RPAベンダーの英Blue Prismは5月22日・23日、米国オーランドで米国の年次イベント「Blue Prism World 2019」を開催した。RPAがブームとなる中、2001年創業の古参ベンダーの同社は、「コネクテッドRPA」を戦略に掲げて差別化を図る。そこではAI、エコシステムなどがキーワードとなりそうだ。
英大手金融機関向けに自動化技術を開発するベンダーとしてスタートしたBlue Prismだが、RPA(Robotic Process Automation)という言葉を生み出したと自負している。同社は毎年、英国と米国で年次イベントを開催、米国では今年4回目を迎え、会場には約2000人の顧客やパートナーが参加した。
CEOのAlastair Bathgate氏は、「ルーティンなタスクを自動化するソフトウェアロボットは、生産性を加速してきた。AIやコグニティブ技術を組み合わせることで、RPAは再び進化する」と述べる。Blue Prismでは進化したRPAを「ロボット」ではなく「デジタルワーカー(Digital Worker)」と呼んでいる。
ロボットが雇用を奪うという懸念については、「新しい技術は雇用を生む」「多くの国で高齢化が進んでおり、自動化は脅威というよりも不可欠な技術になっている」とBathgate氏は述べた。
同社は今年に入り「コネクテッドRPA」というビジョンを打ち出したが、これについて説明したのは、CTOのDave Moss氏だ。
Moss氏によると、さまざまな業界で革新的なアイディアを持つベンチャー企業と既存企業の間に「デジタルアントレプレナーギャップ」というものが生まれているという。
「既存企業はこれまで集めたデータ、構築したベスト・オブ・ブリードシステムが足かせになっている」とMoss氏。コネクテッドRPAは社内に存在するアイディアを持つ社員が自在にRPAを利用して既存、そして新しいビジネスプロセスを自動化してイノベーションにつなげることができるものだという。「顧客の近くにいて顧客や市場のニーズを理解している人たちが、顧客と自社の戦略を結びつけることができる」(Moss氏)
ベンチャー企業との競争だけではない。Moss氏は「(非技術の従業員による)技術と技術が持つパワーへの関心が高くなっている」と語った。企業は、非技術系の従業員の「新しい技術を使って違うことをやってみたい」「差別化を図りたい」というニーズに応える必要があるというのだ。
こうした企業の課題を解決するため、Blue PrismはRPAプラットフォーム「Blue Prism」に加えて、拡張機能を入手できるマーケットプレイス「Blue Prism Digital Exchange」の提供を開始した。顧客は補完的な機能をマーケットプレイスから入手して、自在にBlue Prismを拡張できる。
このアプローチにより、「自動化を増やし、自動化を一緒に」を実現するという。「Blue Prism Digital Exchange」には100以上の機能があり、ユーザーは3000人を上回るとのことだ。
Blue Prismは先に文書処理AI機能「Blue Prism Decipher」を発表した。これは請求書データから必要なデータの抽出と入力を自動で行うことができるものだが、「Blue Prism Digital Exchange」においてデジタル認識技術に関する機能のダウンロードが多いことから提供することにしたものだという。このようなAI機能は今後、同社の戦略の中心になっていく。
会期中、「Blue Prism Digital Exchange」からBlue Prismのソフトウェアライセンスを購入できるようにすることが発表されたほか、自社専用の「Blue Prism Digital Exchange」を展開できるプライベート機能も発表された。また、「Blue Prism Digital Exchange」を中心としたエコシステムをさらに活性化させるため、オンラインコミュニティも立ち上げたことが報告された。
コネクテッドRPAが進化する先は何か?――CEOのBathgate氏は、「人間とマシンのコラボレーション」という。「変化に迅速に対応するため、柔軟性のある自動化戦略が今後企業の中心になるだろう。人間はマシンとの協業により、さらに多くのことを達成できる」と述べた。