衛星を利用したドローンを夏山の遭難救助訓練に活用することを目指した実証実験をこのほど新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とスカパーJSATなどの研究グループが実施した。NEDOによると、実験は成功し、通信状況が悪い山岳地帯での遭難者捜索現場などに威力を発揮すると期待される。
ドローンの運用には主に携帯電話用の通信回線(LTE)などの地上通信を使う。このため、山岳地域など地上通信が届かないエリアでは衛星通信が必要だった。しかし衛星通信用の装置は大型なために大型装置を現在普及しているマルチコプター型ドローンに搭載するのは難しかった。
このためNEDOなどの研究グループは、小型で軽量な衛星通信装置を新たに開発。これをドローンに搭載して山岳救助に活用する計画を進めた。実証実験は5月29~30日、鳥取県警察本部が同県内にある大山で主催した「大山における夏山遭難救助訓練」の際に行われた。実験では、ドローンが撮影した遭難現場映像を、高度約3万6000キロメートルの衛星を経由して地上の救助隊に送信するなどして遭難者役の捜索に役立てる実験に成功したという。
実験では「コンパス登山届ネットワーク」(開発会社・インフカム)と呼ばれる登山届を家族や警察などが共有するシステムも使われた。捜索中の隊員の位置情報などはこのシステム画面に表示され救助訓練に役立ったという。
NEDOは、今回の実証実験に成功した衛星利用のドローン捜索により、安全で迅速な遭難救助活動だけでなく、地上通信が届かない現場での警察・消防活動にも広く活用できるとしている。
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