「基礎研究による知の蓄積と展開~我が国の研究力向上を目指して~」と題した令和元年版科学技術白書を文部科学省がまとめた。政府はこの白書を28日に閣議決定し公表した。白書は、「基礎研究の成果は将来の社会や生活に全く新しい価値をもたらし得る社会発展の基盤」などと指摘して基礎研究の重要性を強調している。
令和元年版科学技術白書は2部構成で、第1部第1章でまず基礎研究の重要性を強調した。ここでは「現在、製品やサービスの高付加価値化が進んだ知識集約型社会への転換が起きており、卓越した新たな発想を追求、創造する知的活動である基礎研究の重要性はより一層高まっている」と記述した。その上で「基礎研究の成果の蓄積と展開は、長期的な社会課題の解決や新産業の創出とともに、将来の社会や生活に全く新しい価値をもたらし得る社会発展の基盤」としている。
第2章では基礎研究を「知のフロンティアを開拓する営み」と位置付けた上で「既存技術の限界を打破し、かつてない画期的な製品やサービスを生み出す可能性を秘めている」として、社会的価値を創造するためにも基礎研究が重要と説いている。
そして基礎研究により創造された科学的価値が経済的・社会的インパクトをもたらした例として、青色発光ダイオード(LED)や、遺伝子の改変技術「クリスパー・キャス9」によるゲノム編集技術、iPS細胞による新たな再生医療などを挙げた。
白書はまた、引用数が多い論文の国際評価で日本の順位が低下し、博士課程の入学者数が目立って減っていることなどを例示し、世界的に見て日本の基礎研究の存在感が低下していることに懸念を表明した。そして「日本の研究力を今後どのように活性化させ展開していくか大きな岐路に立たされている」と指摘して、「国民的な議論と共通認識の醸成が求められている」と結んでいる。
科学技術白書は、毎年テーマを設定して特集を組んで公表しているが、文部科学省関係者によると、基礎研究をテーマに設定して正面から取り上げたのは今回が初めてという。
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