市場動向調査会社である英IHS Markitは、2019年第1四半期の半導体企業ランキングトップ10を発表した。それによると、10社すべてが前年同期比でマイナス成長となったばかりか、10社合計の売上高についてもこの10年で最悪のマイナス成長となった。
メモリ市場の暴落により市場全体が減速
2019年第1四半期の半導体市場は、前年同期比12.9%減の1012億ドルと大きく減速。これほどの減速は、2009年第2四半期以来で、メモリの売り上げが急減したことが主な要因となっている。また、そのメモリの売り上げを除外してみても、同4.4%減と、マイナス成長に陥っており、メモリ市場の暴落だけが現在の半導体不況の原因というわけではないことを示している。
上位10社のうち、もっとも減収幅が大きかったのは前年同期比34.6%減を記録した2位のSamsung Electronics。同社の第1四半期における半導体事業の84%近くがメモリであり、需要低迷、在庫水準の悪化、価格下落といったもろもろの影響をそのまま受ける結果となった。
ほかのメモリメーカーも3位のSK Hynixが同26.3%減、4位のMicron Technologyも同22.5%となり、メモリ市場の減速がいかに大きいものであるかを示す結果となった。ちなみに、これまでトップ10に入っていた東芝メモリ(2018年第4四半期は9位)は、業績悪化の影響でランク外に転落している。
メモリ業界の減速でトップを保ったIntel
1位となったのは、2018年第4四半期に1位に返り咲いたIntel。成長率も同0.3%減とトップ10社中、もっとも低く抑え、Samsungの自滅ともいえる減速でいわば不戦勝といった流れで首位を維持した。
3位から7位までの順位は前年同期と比べても動きはなかった。8位には前年同期10位のInfineon Technologiesが、車載半導体が比較的良好であった結果、同0.6%減と、抑えられたこともありランクイン。9位のSTMicroelectronicsも、ワイヤレス市場の低迷が影響し、同6.7%減と原則したもののランクイン。そして10位には前年同四半期にGPUの販売が好調で9位に入っていたNVIDIAが仮想通貨需要の減速などの影響を受ける形で同23.7%減と、メモリ企業以外ではもっとも大きな下落率を記録した。
東芝メモリはどこに消えたのか?
ここで気になるのは2018年第1四半期のランキング8位に入った東芝メモリの行方である。当時の業績の実態は、東芝本体の半導体事業である東芝デバイス&ストレージ社と東芝の100%子会社(当事)であった東芝メモリの売上高の合算額(35億3000万ドル)であったのだが、その後、東芝メモリは米韓日企業コンソーシアムに売却され東芝の連結決算対象企業から除外、東芝メモリ単体として2018年第4四半期まではトップ10内になんとか踏みとどまっていた。
IHSがこの種の統計を取り始めて以来、日本企業がトップ10から消えたのは今回が初めてだという。東芝メモリはどうなってしまったのかをはっきりさせるために、同社に確認をとった結果、日本企業(日本に本社を置く半導体企業)のみのランキングトップ10の情報を得ることができたので、それを以下に示す。
- 1位 東芝メモリ(世界順位12位)
- 2位 ルネサス エレクトロニクス(同16位)
- 3位 ソニーセミコンダクタソリューションズ(同17位)
- 4位 東芝(同25位)
- 5位 ローム(同26位)
- 6位 日亜化学(同30位)
- 7位 三菱電機(同38位)
- 8位 サンケン電気(同43位)
- 9位 ソシオネクスト(同47位)
- 10位 パナソニック(同50位)
である。
東芝メモリの2019年第1四半期の売上高は前年同期比32%減の18億8400万ドル(2018年第1四半期の東芝メモリのNAND売り上げ分を抽出したものと比較)で、世界のトップ10に入るためには少なくとも20億ドルが必要であるため、トップ10から陥落する結果となった。
また、ソニーの売上高は同24%増と、半導体不況関係なしの状態であり、東芝メモリもうかうかしていると、その座を追われかねない状況になってきた。一方で、東芝本体は、半導体関連の社員350名を対象に早期退職者の募集を始めるなど、システムLSI事業の低迷で業績が悪化。今後もさらに売り上げは下降の一途をたどる可能性もある。
なお、2019年第1四半期における半導体市場に占める日本半導体企業勢の合計割合は9.6%であったという。