産業技術総合研究所は5月28日、NEDO事業において、児童相談所の職員向けに、人工知能(AI)を活用した「児童虐待対応支援システム」を開発したことを発表した。

「児童虐待対応支援システム」は、児童相談所向け業務支援アプリ「AiCAN(Assistance of intelligence for Child Abuse and Neglect)」と確率モデリング技術などのデータ分析用AIを組み合わせたもので、虐待危険度などの総合的な予測を行う。

虐待の危険度の予測は、説明可能性の高い確率モデリングである確率潜在意味分析、虐待の再発率はベイジアンネットワークによる確率的因果推論を用いている。

  • 虐待対応支援システムの構成

  • 児童虐待対応支援システムの画面イメージ

今年6月下旬から、三重県内の2つの児童相談所に同システムを導入し、職員の業務負担軽減や虐待対応の迅速化などの効果を検証する。

AIが提示したシミュレーション結果は、これまでに現場で蓄積した過去の情報に基づくものであり、職員が意思決定する上で有効な判断材料となることが期待されるが、その一方で、発生頻度が極端に低い事例や過去に一度も発生していない事例を予測することは困難なため、最終的な意思決定は、人間がAIにはできない経験や最新の動向なども踏まえて行う必要があるという。

そのため、研究開発でも「最終的な意思決定は人が行う」という原則が踏襲される。実際の現場の業務フローを踏まえてAIをどのように実装すれば、業務効率化や支援の質の向上などに寄与できるのかを検証することが、今回の実証実験の目的としている。